キッチャン

おふくろのキッチャンのレビュー・感想・評価

おふくろ(1955年製作の映画)
4.0
 二階建ての建物(望月と二木が間借り)の建物が手前に映し出され、カメラは、奥にある学校を映しグランドでは女子生徒がバレーボールをしている。
 二木がスパイクを打ち、カメラは再び二階建ての物干し台を映し望月が二木のセーラー服を物干し台に掛け、二階の部屋を映すとそこには望月が服の整理をしていて、そこに部屋を借りている家の娘(二木)が遊びに来ている。
 望月は木村のスーツを物干し台に掛ける。
望月、二木は物干し台から左がバレーボールをしている様子を見ている。
 2人は部屋に戻り二木が野球のグループを見つけ、このグローブ誰のと望月から貰った饅頭を食べながら写真のお兄さん(木村)の話を聞く。
 二木が持つているグローブがクローズアップされ、再びグローブがアップされると、木村がグローブを持っており宍戸とキャッチボールをしている過去に戻る。
 この描写はとても良くできていると思います。

 再び現代に戻り二木が明日が誕生日なので宍戸が二木に誕生日プレゼントをくれると望月に言うと望月は、うちのお兄ちゃんが生きていたら二木が欲しい、お人形を買ってくれるよと言って木村の写真を見つめる。
 
 場面は過去に遡って望月の面前で兄妹げんか(実は仲が良い)をしている和服姿の木村とセーラー服姿の左を映し出す。
 望月は大学生の木村と高校生の娘(左)を育てていた。自慢の息子は新聞社の就職を控えていた。
 望月は自宅で仕立ての仕事をしている。

 女学校の左と友人が映し出され友人の一人が木村を好きである事を暗示される。
 木村が家庭教師先(この時点ではアルバイトは判明していない)から午後8時に帰宅して夕食は友人と食べたと言ったが望月が木村が好きな豆を煮たからとの返答に木村はいらないと言った時の望月の寂しそうな表情が素晴らしい。
 左の木村を好きな友人が来て勉強を教えてくださいとの申し出を木村は素っ気なく追い返す。
 
 その根回しに左の同級生の親(信欣三)にあいにいく望月が木村には怒られる。
 木村は最近望月に冷たかった。望月には喫茶店で無駄遣いする木村たち学生の気持ちがわからない。
 
 ある日、田舎のおじさん(宇野重吉)がたずね、田舎で働かないかと言うが断る。
 そして、家に金持ちそうな夫人(沢村)とその息子がくる。
望月は沢村の言っていることが理解できなかった。
実は木村が沢村のところで3年間家庭教師をやっていて、息子が合格したという話だったのだ。
 そして就職が仙台の銀行に決まったとも聞かされる。木村は何もしらずに悲しむ望月にも心開かなかった。

 仙台にいくので最後の旅行にいく、そしてその帰りに木村は熱をだし、たおれ死ぬ。
 望月の元には生命保険が残されていた。そのためのアルバイトだったのだ。

 そして、望月は左の通う学校の裏に二人で間借りしたのだ。訪ねてきた木村の親友の宍戸に木村のワイシャツ・ネクタイ・スリーピース・コートを着てもらう。
 望月の目には木村の面影を見て涙が止まらなかった。
 ここで最初のスーツを干すシーンが生かされています。
 物干し台では木村の好物だった七輪の鍋に豆の煮ものが置いてあります。
 左が校庭の木に登り亡き兄の木村の遺品を着ている姿の宍戸を見て泣きじゃくり、校庭を学校方向に走り去る姿を物干し台の望月・宍戸の姿をカメラがとらえファーストシーンと同じ構図で映画は終わります。
 左と宍戸が交際して将来的に結婚して新しい息子ができることを暗示させる。

 望月(当時38歳)の演技で全体を盛り上げており、左の明るい演技と木村(当時32歳)の抑えた演技の対比が素晴らしい。

 左(当時25歳)が体育のランニングで足を怪我をシーンなどは左のお転婆が良く出ていると思います。
 左は現・東京女子体育大学卒業後、都立第五商業高校ならびに國學院大學久我山中学校の体育・音楽教師をしながら俳優座の委託生となり演技を学んだみたいです。
 
 宍戸(当時22歳)はラスト、木村のスーツを着る前のシーンで上着を脱いで、物干し場の上から下にいる女子高の校庭にいる女子高生の前でラジオ体操しますがしぐさが滑稽で笑いました。
 イケメンで当時売りだし中ですが、デビュー作の警察日記の現場で遅刻を繰り返し続警察日記には出演できなかったみたいです。

 宇野重吉(当時41歳)は望月の所でお酒を飲みますがお酒を宇野に飲ませたくない望月と宇野の対比が可笑しかった。

 二木てるみ(当時6歳)は3歳で七人の侍デビューし、久松静児の警察日記で主人公に引き取られる捨て子を演じて以来子役として活躍。

 映画欠点は望月が木村に肩入れ過ぎて兄妹のバランスが悪い(当時は男尊女卑の時代?)
 木村の死因が不明であること。