田上

カルメン故郷に帰るの田上のレビュー・感想・評価

カルメン故郷に帰る(1951年製作の映画)
-
フジカラーによる国内初のカラー劇映画作品らしい。
フィルムの歴史に大きく名を残す映画ということで見てみました。
というのも、このゴールデンウィークを利用して国立映画アーカイブとちょうどやってた小津安二郎展を見学して参りまして身も心もどっぷりとフィルムに浸かりまして、日本映画の歴史をたどり、その足跡を確かめたいという気分に相成ったわけです。
それで国内初のカラー作品である歴史を作った映画『カルメン故郷に帰る』です。

デジタルリマスター版だったのかな?
映像はかなり綺麗でした。
僕の出身県で馴染みのあった信州軽井沢が舞台で、北軽井沢の雄大な風景を余すことなく表現する力強く生き生きとした映像が印象的でありました。

こういう古い映画を今見ると、この映画が作られた当時の空気や感覚を正確に捉えることは難しくてユーモアだったり、場面の意図があんまり理解できない部分もたくさんあった。
でも、それが古い映画の楽しいところだったりするかも。
現代との解離は仕方ないけど、それで当時を想像したり、文献や作品の解説を読んだりしてどういう背景の映画だったのか探るのも楽しい。

当時も戦後で自由で軽い風潮が流行であって、それと根付いてた道徳とか価値観がぶつかる内容のストーリーは今に置き換えて見ても通づる部分があるなぁと思った。
エロの一般化って今のAV業界や同人AVを取り巻く環境にも当てはまるなァと思ったんだけど、エロを消費さしてもらってる立場の自分や性風俗を生業としてる当事者からすると市民権を得るのはいい事なんだろうと思う。偏見や差別が無くなって働きやすくなるし。この映画でも結果的にエロで儲かってそれによって救われてる人もいたし。
ただやっぱり個々人の持つ恥や道徳観念とぶつかるのもわかる。
一人一人の持つ倫理観や道徳は無くしたらいけないものだと思うし、そうなるとどこかで線引きしなくちゃいけないものなんだけどどこまで良くてどこから良くないか個々人に委ねられる部分が大きい今は線引きが難しくなってるよね。
この映画の"校長"みたいに道徳の基準となれる人が今の時代には合わなくて居なくなり、1本の線を引いてコレは恥だ!なんて叫ぶのは僕はやっぱり違和感がある。
価値観が入れ替わるっていうのはやっぱり難しいしぶつかり合ってしまうけど、そういうのがイイ感じで合わさって理解し合えたら良いなぁと思う。
線引きが難しい今ならではのやり方で"アップデート"できたらいいなと。
そうな風にこの映画を見て感じました。
非常におもしろかった。
田上

田上