【第57回カンヌ映画祭 コンペティション部門出品】
『グレートビューティー』などで知られるパオロ・ソレンティーノ監督作品。カンヌのコンペに出品、ダヴィッド・デ・ドナテッロ賞では作品賞他5部門で受賞、ヨーロッパ映画賞でも監督賞と主演男優賞(トニ・セルヴィッロ)にノミネートされた。
今まで観たソレンティーノ作品で一番面白かった。この人は何なんだろうという謎が段々と斜め上へと展開していく。もちろんソレンティーノらしい静謐な美しさも存分に味わえる。
歩く歩道に乗ってスーツケースを運ぶ男から始まるというのが秀逸。伏線としても、「自分は動いていないのに勝手に動かされる」という象徴的な意味としても機能している。
ホテルにずっといる謎の男は一体何をしているのだろう?何の職業なんだろう?という謎が前半は深まっていく。
そして段々と明かされていく後半、イタリアらしい展開になっていく。まさかそんなところに繋がるなんて。
「愛の果てへの旅」というタイトルが見終わってみるとすごく納得できる。ホテルという無機質で人間味のない空間がまるで牢獄のように感じられるが、それが比喩ではない。
老人が主役というのはその後の作品でも変わらないけど、本作は予想もしないところに連れて行ってくれたという意味で頭一つ抜けて好きな作品になった。こういう旧作も配信してくれるイタリア映画祭に感謝。