モールス

ルルドの泉でのモールスのレビュー・感想・評価

ルルドの泉で(2009年製作の映画)
4.5
四年前にミニシアターまで他作品を目当てに足を運んだのですが、時間が余ったのでついでに観た作品です。
タイトルからして、キリスト教関係の話と思いましたが、宗教臭さはなく、人間の潜在的心理を鋭く描いた良作と言えます。
主人公クリスティーヌは、聖地ルルドの泉に訪れた自分の足で立つことができない車椅子生活を送る女性です。この聖なる泉で「奇跡」と言える回復を彼女は果たします。「奇跡」ですから、そういった現象が万人に起こるはずもありません。その回復ぶりに周囲の人々は妬みのような感情を持ち、彼女に対しては冷ややかな目線を浴びせました。「何故彼女にだけ、神は救いの手を差しのべたのか?」と言いたげな様子は人間の感情を表現していて興味深い描写でした。他人の幸せは素直に喜べないのも、人間らしさかもしれません…。
ラストシーンはかなりカタルシスを感じました。主人公クリスティーヌが周囲の人が他人の不幸を願う姿に落胆して、再び車椅子に腰を落とします。社会が個人をバッシングする構図が本作にあったと思います。その表現のナチュラルさに私はただ感心するばかりでした。
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