saco

ルルドの泉でのsacoのレビュー・感想・評価

ルルドの泉で(2009年製作の映画)
3.5
2013年3月 宮崎キネマ館にて鑑賞後の感想....

「信じる者は救われる・・・・』
何かが首尾よくいった時、タイミング良く難を免れた時、たまたま願いが叶った時、人は冗談ぽっく口にする事がある。私も。別にクリスチャンでもなく、信じる宗教を持っているわけでもないから、心の底から言っているわけではない。

映画【ルルドの泉で】を観た。なんも知らん私は、ルルドとは主人公の女の子の名前くらいにしか思っていなかすった。ので、観始めてすぐに大きな勘違いに気づかされた。ルルドとは、フランス南西部ピレネー山脈の麓にある小さな村の名。その地に湧き出る水は、不治の病をも治すという奇蹟の水として世界的に有名なんだそう。世界中の敬虔な信者が、巡礼に訪れる。主人公のクリスティーヌ(シルヴィー・テステュー)は難病に侵され首から下は麻痺している。彼女は、そんなに熱心な信者ではない・・・ところが、奇蹟は彼女に起こるのだ。序々に手足が力を取り戻し、ついには自力で立ち、想いを寄せる男性とおぼつかないながらもダンスを踊るまでに快復する。。。。果たして、本当に彼女に奇蹟が起こったのだろうか。物語は、微妙な方向へと進んでいき、深い余韻を残して終わる。

快復をみせるクリスティーヌに対して冷ややかな感情を隠そうともしない者、神の力を信じて疑わない敬虔な信者、どちらも均等に描かれているところが良い。奇蹟を肯定も否定もしない。そこにあるがままの現象を見せながら、いかにして自分の身に起きている事を受容し、精神のバランスを生み心身を穏やかな状態に導くか。そうさせるものは何なのかを淡々と描ききるのは見事だったと思う。

信者の問いに対して、もっともらしい事を言う牧師などは、非常に胡散臭くみえる。どこかの山奥の僧侶が語る仏の教えの方が、よほど納得できると思うのは、やはり私が日本人だからなのか。私は、信心は希薄だけれど感謝の気持ちを持つこと、時に厳かな気持ちになる事は大切なことだと思っている。特に印象に残ったのは、ラストにクリスティーヌが、抗いを捨て、静かにそこに用意されたものに座るところ。その表情は、決して諦めではなく、穏やかな悟りのようなものだったと思う。その横顔は透き通るように美しかった。

来世を信じることが出来たら、死もさほど怖くはなくなるのかな・・・・とはいつも思うことだ。
信じるものは救われる・・・なのかな、やっぱ。
saco

saco