美は乱調にあり。
では、美は腐敗の中にもあるのか?
という、挑戦とも受け取れなくもないけれど… 。そんな気負いみたいなものもないし、そんなにグロテスクでもなし。
独特のユーモアを含んでいるので、ある種ドライな感じで観られるのかもしれない。
例えば、子どもの頃って罪悪感なく、昆虫などの死骸をバラバラに分解してしまう。
そこにあるのは残酷性とかではなくて、なんというか… もっとイノセントな「好奇心」。
お互いの妻を事故で突然失くしたオズワルドとオリヴァーも、その哀しい出来事がきっかけである意味幼児返りしたのかもしれない。
歴とした大人が、深いところまで幼児返りしてしまうと、途轍もない行動に出る… というのもあり得るわけで。
このラスト・シーンは、さながら「二人の幼児のいき過ぎた実験」。
もしかしたらこの作品はピーター・グリーナウェイ監督が幼少期の頃に試したかった実験を、思う存分楽しんでやってみたものなのかもしれない。
執拗なまでにシンメトリーに拘った映像、光の当て方にも実験性を感じられたり(部屋の照明の明暗が突然振幅するなど)、とても印象的な度重なる鏡の使い方… そこかしこに、ピーター・グリーナウェイの無垢な冒険心を感じずにはいられない。