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ZOOの708のネタバレレビュー・内容・結末

ZOO(1985年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ピーター・グリーナウェイのレトロスペクティヴにて観ました。

同時に妻を交通事故で亡くした双子の動物学者の兄オズワルドと弟オリヴァー。そのとき車を運転していて片脚を切断した女性アルバにふたりして惹かれていきながら、オズワルドは亡くなった妻を思いながら、動物の死骸が腐敗していく過程をフィルムに収め、オリヴァーは事故現場のガラス片を飲んだり、動物を放ったりなどの奇行を繰り返します。

この作品での縛りやテーマはシンメトリーです。画面もシンメトリーやセンタリングの構図が多いのですが、美しくありながらも狂気的なものを感じました。「シャイニング」の双子のシーンの狂気に近いあの感じ。アルバは美意識の高すぎる担当医によって、片脚を失くしてアンバランスになった状態から、健康な脚まで切断させられる羽目になって、シンメトリーの美しさを取り戻すというヤバさ。

ストーリーとしては単調でさほど盛り上がりもなく、グリーナウェイの美学をお披露目する場という意味合いが高くて、それはそれで成立していると思います。動物が腐敗する早回しの映像や、フェルメールの絵のオマージュがいくつか登場して、美的と病的のフュージョンという感じです。腐敗の記録収集の果ては、オズワルドとオリヴァー自らが実験台になるというオチ。妻を亡くしたことによる奇行を突き詰めた行く末としては納得できるオチで、ある種のハッピーエンドじゃないかと思います。

マイケル・ナイマンによる反復する音楽には気品を感じながらも、狂気を感じました。この作品の音楽は、後に日本でのテレビ番組「料理の鉄人」に使われていたせいで、音楽が流れるたびに「料理の鉄人」を思い出してしまうという悲劇。刷り込みって怖い。
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