アキラナウェイ

お熱い夜をあなたにのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

お熱い夜をあなたに(1972年製作の映画)
3.9
「ペルメッソ」
「アバンティ」

「入ってもいいですか?」
「どうぞお入り下さい」というやり取りのイタリア語。原題の「Avanti」はここから。邦題は「お熱いのがお好き」を意識してだと思うが、的外れ。邦題、こんなんで委員会。

ビリー・ワイルダー監督にジャック・レモン主演という大好物な組み合わせ。やっぱり面白い!!

イタリアのイスキア島で療養中の父が急死したとの訃報を受け、遺体を引き取りにやってきたアメリカの実業家ウェンデル(ジャック・レモン)。そこで出会ったイギリス人女性のパメラ(ジュリエット・ミルズ)。彼女も母を亡くし、遺体を引き取りに訪れたと言う。

実はウェンデルの父とパメラの母は、10年に渡り毎年1ヶ月間イスキア島でのバカンスを楽しむ不倫関係にあった—— 。

何事もゆったりとして、大らかな国民性のイタリアを舞台に、終始イライラしているアメリカ人的合理主義のウェンデルと、おっとりしたイギリス人気質のパメラとの組み合わせが絶妙。

ビリー・ワイルダー特有のドタバタ喜劇でありながら、舞台がイタリアだけに、ジャック・レモンの演技のリズムと、周りの人達のそれとがチグハグなのが面白い。

それにしても、ジュリエット・ミルズのぽっちゃり体型をイジリ過ぎで、自虐ネタも多発し過ぎで、そこは今の時代じゃなかなか笑えない。

遺体の引き取り手続きにやって来たお役所の人がスーツの内ポケットから、書類やハンコを次々と出してきて、リズミカルに押印する"技"がウケる。ここら辺の描写、流石のビリー・ワイルダー印。

有能な支配人カルーチや、何故か口髭のあるシチリア女性のメイドや、そのメイドに結婚を迫られるボーイのブルーノ…。キャラクターの癖が強い!!

でも、そのキャラクター達をうまく絡ませたオチが俊逸。

自分達の父と母の様に、バカンスを楽しむ様になるウェンデルとパメラ。

特に裸になって海を泳ぎ出すパメラを追いかけるウェンデルのパンツが泳いでいるうちにぬる〜っと脱げていくのとか、パメラのおっぱいを靴下で隠そうとするウェンデルとか、流石のジャック・レモンのコミカルな動きが最高。

不倫だし、ご遺体だし、笑いに昇華するには不謹慎な状況での喜劇というチグハグ感。

事を急ぐアメリカ人とのんびりなイタリア人というチグハグ感。

この辺りが、大笑いするには障害ともなって、些か残念ではあるが、結果的にはうまく掛け合わされていて、流石センスが良いなと唸る逸品。