春とヒコーキ土岡哲朗

バンテージ・ポイントの春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

バンテージ・ポイント(2008年製作の映画)
-
視点多用が面白い。
短時間の出来事を何回も辿ることで重厚にするアイデアは、この映画が初めてではないにしても、完璧に使いこなしている。演壇に隠された爆弾が爆発するシーンは絶望度が強く、何回も繰り返すに値するインパクト。

①テレビ局の視点。マスコミという属性と、部外者という点で、最も客観的な目線。導入にピッタリ。
②復帰したベテランシークレット・サービス、バーンズの視点。彼が、テレビ局の捕らえた映像を見て重大な事実を知るが、観客にはそれがまだまだ分からない。しかし、映画全体の割と早い段階で、彼は「それ」に気づいているというのが、この手法の面白さ。
③事件に関わる青年の視点。愛情によって動かされている節が、BGM含め、舞台であるスペインっぽさを出している。
④観光客の視点。またもや、事件に深く介入する立場ではない客観的視点だが、広場の内部・事件の渦中にいる点がマスコミと異なるし、主観もある。
⑤大統領の視点。事件の核心が見え始める。犯人の目的や、事件の要因が分かる。
⑥黒幕の指示の下で動く、首謀者の一人、テロに加担させられる者、裏切り者の視点。怪しい人間たちの立場が明かされていく。
⑦そして、事件は終わりへ向かう。バーンズは、トラウマで空回りすると思われていたが、シークレット・サービスの意地を見せる。事件の幕が下りるとき、犠牲の多さを思い出す。生き残った者たちの歩みに、安心と悲しさを感じる。