似太郎

破れ太鼓の似太郎のレビュー・感想・評価

破れ太鼓(1949年製作の映画)
3.8
一応コメディなのだが戦後史観丸出しで爆笑に至らないのが残念だ。木下恵介の中でも褒められた出来とはお世辞にも言えない。主演の頑固親父バンツマの名演が勿体なく思う。

ストーリー自体は戦後の中流家庭風刺喜劇という体裁を取っている。共同脚本は小林正樹で、戦後のインテリっぽい視点が導入されている辺りが肝心。この頃の父親はまるで『スターウォーズ』に出てくるダースベイダーのような圧倒的な権力像である。

どうも木下恵介の演出がテクニックに酔っていて終始空転してると感じる。この人のどうしても「戦後日本特有のダサさ」が全面に出る辺りが木下の弱点なのかも知れない。ちっとも笑えない。

のちに大島渚が木下恵介の手法を否定した気持ちも良く分かるが、ヒューマニズムに溢れた映画なのでそこまで嫌いにはなれないのが本音である。少なくとも最近の邦画によくある「あざとい」要素は皆無。木下恵介らしいクラフトマンシップは一応感じる事ができる。
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