7月4日―。
この日はアメリカ国民にとって、少なくともふたつの意味ある特別な日だろう。
ひとつはヤンキースの打撃王ルー・ゲーリッグの引退セレモニーが行われた日、そしてもうひとつは、そう独立記念日である。
そんな特別な日に生まれたある青年の、壮絶なベトナム体験を描いた問題作だ。
自らのベトナム戦争体験を綴った『プラトーン』のオリヴァー・ストーン監督が、親友でもある反戦運動家ロン・コーヴィックの自伝を基に、帰還兵の苦悩を生々しく浮き彫りにし、『プラトーン』に続いてアカデミー監督賞を受賞した。
戦争という狂気、悲惨な入院生活など、ショッキングな描写もさることながら、肉体も精神も傷つき、世論との価値観の相違に戸惑いながら、次第に自身を見失ってしまう青年ロンを見事に演じきったトム・クルーズの芝居が素晴らしい。
なお、彼はこの役のために1年間、車椅子生活を送り、それまでのアイドルスターのイメージを払拭、以降名優への階段を着実に上ることとなる。
一見、美しい言葉に思える“愛国心” と “国を愛する心”とは、似て非なるもの。
「国は愛しているが、政府は愛せない」
ジョン・ウィリアムズの音楽も相まって、ロンの台詞が重く心に伸し掛かった。
97 2022