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悪い男の&yのレビュー・感想・評価

悪い男(2001年製作の映画)
4.2
【2013/11/1:新橋文化劇場】キム・ギドクの映画ってほんと喋らない。この作品の主人公ハンギも、台詞はたった一言だけ。しかしその言葉のあまりの凡庸さ(不器用さ)、過去の諸々を想像させる声色。効いてる。
一方清純な女子大生ソナも、泣き喚いたりするシーンはあるものの、心情の変化について言葉では語らない。事が起きる以前、彼氏とのデートで欲しがるドレスは白。売春宿に売られて赤いドレスを充てがわれるが、振り払って選ぶのも白。しかし二人が寄り添う海辺のシーンでは、自らの意思で選んだ、赤と白が入り混じった柄の(あの写真に似た)ドレス。白が、赤をも受け入れて染まる。こういう見せ方、巧いなあと思います。
女性蔑視と見る向きもあるらしいけど、エゴンシーレの絵を破くという小さな悪事で性への憧憬を示唆していたり、遣り手オバサンの「犯罪者だってモザイクがかかってるのに…」の台詞など、結構その辺り配慮した描き方になってるんじゃないかと。
ハンギがソナを初めて見たときの衝動が「愛」によるものだと、ハンギ自身が認識できたら。でも究極の愛はモラルなど超えたところにあって、もはや肉体すら不要であることを示すラストは圧巻。
大学生彼氏のナヨっぷりは、ギドクの悪意山盛りだな〜。
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