ポックンポクン

悪い男のポックンポクンのネタバレレビュー・内容・結末

悪い男(2001年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

いくら劣悪な環境にも順応して生存していくために、人間は自分に言い聞かせ自らに刷り込んでいける。「大丈夫。」って。男はそれを利用する。
女は鎖を解かれてもどこにも行けはしない。いまを生き延びるだけ。そうなってしまってはもう男のいびつな情念を受け入れて信じるのみ。むしろこの本当は内心傷だらけな男を私は包み込んでいるのだとさえ。そしてそこに男は甘えるのだ。かくも女はたおやかで、かくも男は疑い深い。
この映画はかなり人間の生存本能のレッドゾーンを際どく攻めた試みだ。
人間のもつある側面を鋭く描くのが秀でた映画だとしたら、この映画は秀でている。
ただ、これを究極の愛だなんて表現するのは否定したい。そこかしこに溢れるもつれていびつな情愛の片鱗に過ぎない。ドメスティックラブ。深淵の底で結ばれる温情であり生存確認。見えないから掴み合う。
悪い男には相違ない。