708

悪い男の708のネタバレレビュー・内容・結末

悪い男(2001年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

キム・ギドク流の純愛ロマンス。とてつもなく、いびつでゆがんでいるけど、純度は高いです。

街角で一目惚れした女子大生ソナに、いきなり強引にキスをした一匹狼のヤクザのハンギ。裏の手を使ってソナを娼婦に転落させて、ちょっと離れた場所やマジックミラー越しに見つめ続けるんだけど、いびつで不器用で無骨なやり方でしか愛情表現ができないハンギが、自分を受け入れて欲しいがため懸命なのは十分に伝わります。

ソナは売春宿に軟禁状態で初めは抵抗していたものの、どんどん転落していって、気づけばハンギがいないとダメという状態に変わっていきますが、それってストックホルム症候群みたいなもんなのでしょう。

「ヤクザ風情が愛だの抜かしてんじゃねぇ」

ずっと無口だったハンギがラスト近くで、やっと絞り出すように言った言葉は自分自身に対するもの。そして、ハンギは自分の声にコンプレックスを持っているからこそ、多分若い頃にバカにされてヤクザの道を選んだんだろうし、まったく喋らないし、自己表現や愛情表現が不器用なのでしょう。かなりゆがみまくってはいるものの、根底にあるのは純愛ロマンスなんだろうと思います。

体を代償にトラックをヒッチハイクをしたり、ハンギのために軽トラで移動売春を始めたりと、完全にハンギの手に落ちてハンギの世界観で生きるようになったソナ。これもひとつのハッピーエンドなんだろうと僕は解釈しています。

ハンギ役って「メビウス」の父親役のチョ・ジェヒョンなんですね。まったく同一人物に見えませんでした。

それにしてもキム・ギドク、こんなストーリーがよく思いつくよなぁ。
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