Jeffrey

悪い男のJeffreyのレビュー・感想・評価

悪い男(2001年製作の映画)
2.5
「悪い男」

冒頭、春愁と暮春の出来事。無口な男は女にキスをする。兵士に捕まり謝罪を、彼はヤクザ。彼氏との日常、ガラスの狂気、二極化分裂、敗者と勝者、暴力、血飛沫、手下の話。今、ハンギは2度刺される…本作は前作に引き続き、世界3大映画祭のベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品されたキム・ギドク監督の不条理映画で、昔レンタルで鑑賞していたが、この度BDを購入して再鑑賞した。この作品は韓国で空前の論争を巻き起こした恋愛映画として伝説化されているようだが、確かに中身の内容は凄いものであった。

謳い文句に相手を地獄に落とすことで愛を表現する男と地獄に落とされた女の究極の愛を描いたとなっている一文を読むと見たくなってしまう。彼の初期の傑作と一部で言われているようだが、個人的にはそこまで好きではない映画だ。

さて、物語は一目惚れした女子大生ソナを罠にかけ売春婦に落とす孤独なヤクザ、ハンギ。落とした男と落とされた女がいつしか極限の純愛にたどり着く。

本作は、冒頭に大都市の行き交う人々の蠢く描写で始まる。そこに1人の男がフランクフルトを食べながら街を徘徊する。カメラはゆっくりと彼をとらえる。ベンチに座る1人の女性、男はそっと相席する。カメラは2人を真正面から捉え、徐々に寄って行く。女は携帯電話で彼氏と話す。男はそれを眺める。女は見つめられていたのを不気味に思いその場から立ち去る。公共の場で眼鏡をかけたインテリな彼氏と待ち合わせをする。そこにヤクザのその男が乱入して無理矢理彼女にキスをする。

彼氏は必死に抵抗するが、なかなかキスを止められない。やがてキスが終わり、彼氏が男をぶん殴る。そこには韓国兵士が2人いて、彼女がみんなの目の前で謝ってと言うが、彼は無言で立ち去ろうとするところを兵士が止め、兵士と取っ組み合いの喧嘩になる。そして兵士に捕まった男が彼女に差し出され、謝れと言うが謝らず、彼女は最低な男と唾を吐きかけてその場を立ち去る。

続いて、ハンギ(ヤクザの男の名前)は窓ガラスを割る。こうして、カメラは無口なその男を捉えていく。やがて、ソナ(キスされた女の名前)が男の財布をスッたことによってトラブルになる描写へと変わる。ソナは担保として自分の体を売りに出す。それで貸してもらった金を男に返す。夜の繁華街へ。雨降る外で新入りが入ったので味見してみませんかとスタッフが男に言う。男が中に入っていく。そうするとキャストの女が男が中で暴れているから何とかしてくれと女の子たちをまとめる男に言う。

続いて、ソナが人気のない空き地で男に襲われる所を男2人に助けてもらう(関係者)。彼女は売春婦が働く店へ連れていかれる。そこの売春婦のリーダー的な女に名前はと聞かれ、反抗したことによってビンタされる。彼女は自分の名前と年齢を話す。そして衣装を選んでもらう。だから、自分で選んだ白いワンピースを着ることにする。ネオン光る夜のショット、売春婦たちが手を振って男たちを呼び込む。

ソナは1人寂しく椅子に座って外を眺めている。そこに1人の男性客が彼女に惹かれて、彼女をベッドに誘うが彼女は抵抗する。ハンギの手下の男が部屋に入り、その男性客に他の女に変えて欲しいと言うが、駄々を捏ね為に物を投げて言うことを聞かせる。男性客は退散する(この時、マジックミラー越しにハンギは一部始終を見ている)。ソナは売春婦の女リーダーに私は好きな男性がいて最後に彼に抱かれたいのと懇願し、男と合わせてもらうことになる。

ソナは彼氏と車の中で会って話をするが、時間切れで関係者に無理矢理引き離される。そして売春婦の仕事に戻り、いやいや叫びながら男の相手をする。夜のバッティングセンターでハンギが1人バットを振り回している。帰り道に男をボコボコにする。翌日、雨の中向かいのビルの屋上でビールを飲みながら仲間たちと売春婦の店を眺めながら会話をする。ハンギはソナに絵のカタログのようなものを差し出す。彼女は部屋でそれを眺める。

続いて、ノックが鳴り響き、ハンギの手下がやってくる。金を机の上に置き、ソナに客じゃないと俺と寝てくれないだろうと言う。彼女はゆっくりとブラジャーを外し、男はタンクトップを脱ぎ始める。そして性行為へ。それをマジックミラー越しにタバコを吸いながら見るハンギ。ソナと手下の男は会話をする。男は去り、彼女は外に出て向かいのビルに上がりハンギに騙したのねと言いビンタを食らわせる。夜、ハンギは手下2人の前でバットで窓ガラスを割る。

ソナは荷物をまとめて売春宿から出ようとするが、娼婦のリーダー格の女に止められる。 2人はお酒を飲みながら話をする。こうして、ハンギとソナの物語が佳境へと展開していく…と簡単に説明するとこんな感じで、凡人の僕からしたら理解不能な純愛映画である。全くもって理解ができない、理解に苦しむのである。

やはりキム・ギドクワールドって感じは以前あるが、前作2本の方が圧倒的に好きだ。独特な世界観は持続しているところは評価できる。人を傷つけることでしか愛を確認できないゴロツキの男とそれに人生を狂わされる女子大生の悲惨な物語にはいくつかの登場人物のプロットが挟まれる。例えば兄貴と慕っている手下の1人の男の父親が病気でどうしてもお金が必要だったために隠しカメラで女の裸の動画を売っていたと言う件や、売春婦の女リーダーの苦労話などだ。

ラストの海岸沿いの空中撮影が非常に印象的に残る。
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