喜連川風連

悪い男の喜連川風連のレビュー・感想・評価

悪い男(2001年製作の映画)
4.5
セルフの少ない、画で語る映画が好きだ。
是枝作品の長回しは冗長で苦手だが、キム・ギドク作品は見てしまう。

情報が極限まで削ぎ落とされているため、長回しでもあれこれ考える余地が残っていて好きだ。

そしてどの画も構図や色、照明がバリバリに決まっている。

男がセリフを発するシーンは、わずかに1シーンだけ。思わず鳥肌が立った。
あとは表情と拳だけで物語る。
ヤクザと愛。
仕事に徹していたはずなのに、裏の世界に叩き落とした女を好きになってしまった男。
その男が憎くて仕方ないのに、自分の感情をぶつけられる数少ない相手だからか?愛が芽生えてしまう女。

だが決して、分かり合うことはなく、二人の間には、常にガラスが1枚隔てている。

ケンカは強いのに、彼女の前ではお酒がないとまともでいられない男。

「愛とは合理的なものにあらず」
をここまで表現したのがすごい。

冷静に見ていると理解できないところもあるのだが、愛ってこういうものなのかもなとも思う。

理詰めで書いていては決して書けない脚本。
いやあ恐るべし。

後半部分、本当に女優さんの顔が死んでいっていると思ったら、実際この作品を最後に引退されてるんですね。。
喜連川風連

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