つるみん

獅子王たちの夏のつるみんのレビュー・感想・評価

獅子王たちの夏(1991年製作の映画)
3.6
〝いちごみるく〟

儚く散る男たちの想い。でも裏社会に生きる者って、夏という季節って、そういう事だよなと思わせてくれる青春映画だった。

まずこの『獅子王たちの夏』というタイトルが良い。哀川翔演じる獅子座の勝はどこかヤクザになりきれないチンピラ。的場浩司演じる獅子座の修はヤクザの鑑と言えるほど義理堅い奴。敵対する組同時の2人を交互に描く本作だが、OPでの交わりがほぼ唯一な所と言っても過言ではない。そこが大変素晴らしい。

シャブの液体を口に含みながらうがいをするシーンやボスの血をコップいっぱいに溜めて飲み干すシーンなど、ややぶっ飛んだ演出もありながら、そこまで徹底したヤクザものじゃないのが本作の見所。
むしろ青春映画でありコメディでもある。

「スタイリストってのは、スタイルが良い人のことかい?」

「悔しいんだよ…。俺が真剣に惚れた女がこんなんじゃ…。」

ダサい。でも格好良い。あの時代がそうさせているのと哀川翔が言うから許されるんだ。まだまだ未熟な翔さんがどんどん可愛く見えてくる不思議な作品。

これを任侠のジャンルに入れるならかなり観やすい映画だと思うが、それは中盤まで。具体的に言うと(ネタバレになるが)的場浩司が蜂の巣にされるシーンあたりまで。
そこからはテンポも遅く、哀川翔と香坂みゆきの関係も観ているこちらは既に冷めた状態に。(ただ氷削りながら帰りを待つシーンは好き笑)ラストの展開も低レベルな任侠ものとなってしまったのが何だか勿体ない。
的場浩司が蜂の巣にされたシーンあたりで切っても良かったのではと個人的には思う。なぜならそこが1番物語としてどうなるのか気になる(2人は対面するの?対面したらどんな会話をするの?会話もなしにどんな展開が繰り広げられるのだろう?)最高潮のポイントでしょ。
その後はそりゃ自然と冷めてしまいますよ。
つるみん

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