半兵衛

暴行儀式の半兵衛のレビュー・感想・評価

暴行儀式(1980年製作の映画)
3.5
不良を題材にした作品はさほど好みではないけれどこういうみみっちい不良映画は好き、ワルというにはあまりにも幼くてやる根性も覇気も持ち合わせていない少年たち四人が逆恨みで元暴走族を襲撃する冴えない日々。アイ・マイ・ミー・マインという四人のふざけつつも実は曖昧ともかかっている名前からもその半端っぷりが伝わるが、そんな彼らが何の気なしに暴力を振るっていった結果はやはり因果応報の結末に。でも冴えない日常ドラマが影響してエロ場面もどことなく興奮しないのでポルノ映画としては失格なのかも(実際会社側の評判は悪かったらしい)。

こんなダメ人間の映画なのに暴力描写は結構過激なのにびっくり、冒頭のチ◯コ噛みやワンカットで人があっけなく死んだりするのもインパクトがあったけれど一番の衝撃はハサミによる見えない拷問。あれは下手なバイオレンスより怖い。

根岸監督の四人の状況を彼らが所持する車に例えたり朝にはじまり朝で終わる演出も見事だし、前田米造による撮影も素晴らしくて、後半のアジト襲撃では長回しで暴行場面を撮影して暗闇や手持ちのブレで攻撃する相手が見えないことで暴行される恐怖というのを主人公たち同様体感できるのも凄い。そして外に出る瞬間風を吹かす演出がカッコいい。

半端者が自分なりにけじめをつける明るくも切ないラストも印象的。

それにしても結構センスのある映画を撮って森田芳光や相米慎二と並び80年代初期にはトップランナーとして期待されていた根岸監督が、90年代以降急に失速したのはバブル以降の流れについていけなくなったのか。
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