ゴト

ふたりの人魚のゴトのレビュー・感想・評価

ふたりの人魚(2000年製作の映画)
3.7
上海の北部を横断するように流れる呉淞江。太湖から黄浦江へぶつかり、そのまま海へと注ぐこの河は、街の移り変わりと流域に住む人々の営みを、その身を横たえずっと見つめてきた。

この物語の主人公は少し変わっている。絶えずカメラを回し、レンズを通した視点でしか彼は登場しない。この顔のない主人公が何を示すのか。解釈は色々あると思う。そのまんま主人公でもあるし、観客の目線である。また、監督の視点という見方もできる。

監督は上海出身のようだし、肌で感じた上海という大都市の変化を作品にしたのかもしれない。そして、その変化を象徴するのが邦題にもあるふたりの人魚なのではないか。

怪しげなお店で金髪のカツラを被り、人魚のコスチュームを着てショーを演じているメイメイに対して、ムーダンは如何にも純朴で背伸びをしたがる年頃の少女といった感じだ。原題が河の名前そのままなところをみても、そこに住う人々、街の変化がふたりの対比で表されているように思える。

そして、街が昔の上海でなくなってしまうのを、寂しく思う気持ちがあるのではないか。ムーダンからメイメイという流れが、どこか転落という印象を与えるところをみても、やはりそうなのではと思う。

中国の映画だけど、ヨーロッパ的雰囲気を持っている。あと個人的にだけど、アジア人の女の子が派手な色のカツラをつけている映画には良作が多い気がする(日本をのぞく)。
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