デニロ

大東京誕生 大江戸の鐘 風雲篇 開花篇のデニロのレビュー・感想・評価

3.0
1958年製作公開。松竹時代劇三十五周年記念映画。脚本猪俣勝人、岸生朗、柴英三郎。監督大曽根辰保。監督の名前に惹かれて出かけます。数年前、ダイナミックな時代劇の作風に圧倒されて以来、目にしたら出掛けることにしています。かなりの作品を演出しているのでおそらく全部を観ることは出来ないし、そもそもフィルムがどれだけ残っているのやら。

風雲篇、開花篇の二部構成の117分。別に分ける必要もないほどだと思うけれど。松本幸四郎の小栗上野介と高田浩吉の勝海舟の相克を通して、大政奉還後の江戸を描く。対峙するのが錦旗を先頭に進軍する新政府軍東征大総督府下参謀島田省吾演じる西郷隆盛。この西郷がよくわからぬ張りぼての様な扮装をしていて、しかもかなり高齢のお爺さんにしか見えない。この頃西郷は40歳前後だったんだけど。

まあよい。

徳川時代の終焉を幕臣がどのように対処したかを絵巻物語風に描いている。幕臣オールスターズで豪華絢爛。最近、徳川時代を評価する、というより薩長土肥新政府の足が地に着かぬ政策を検証する流れがある。わたしも知識が増えるにつけ、明治維新はかなり犯罪的であると感じるようになっている。あらゆる革命は犯罪的である、という文脈ではなく、彼らの行った性急な脱亜入欧の中途半端な成功体験が今に続いている気がするのです。景気回復、景気回復、景気回復。もはやお念仏にしか過ぎない文言で、景気さえ回復すればと国民を欺く。感染症対策と経済の両立。経済を止めてはならない。経済は止めようと思っても止まらない。止まるのは金が金を産む仕組みだ。金に群がる輩があぶれるだけだ。金はあるところをグルグル回る。その仕組みを欺瞞で隠し通す。

嵯峨三智子、新珠三千代、高千穂ひづるが花を添える。魚屋の娘がくりくりしたお目めと奇麗な鼻筋で美人さんだ、と思って調べたら、何と富士真奈美でした。

シネマヴェーラ渋谷 あなたは猪俣勝人を知っているか にて
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