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ジョニー・ハンサムの一人旅のレビュー・感想・評価

ジョニー・ハンサム(1989年製作の映画)
4.0
ウォルター・ヒル監督作。

生まれつき醜い顔の強盗犯・ジョニーが、親友を殺したかつての仲間に対して復讐していく姿を描いたアクション。

アクション映画の大先生、ウォルター・ヒル監督による復讐物。特徴は『エレファント・マン』やシェールの『マスク』のように、主人公の男の顔面が生まれつきひどく醜いこと。奇形の顔面の特殊メイクは完璧で、恐らく誰が見てもミッキー・ロークだとは気づかないと思う。また、鼻がつまったような独特の声も特徴的。ミッキー・ロークは元々起き立てほやほやに近い声をしているが、それをさらに聞き取りづらく“フガフガ”させた印象だ。

宝石店強盗の最中に仲間の裏切りにより親友を殺された挙句、投獄されたジョニー。医師の勧めで整形手術を行い、人並み(というより人並み以上)の顔を手に入れたジョニーは信頼できる医師の助言のもと更生の日々を送る。しかし、ジョニーの心の中では、親友を殺したかつての仲間に対する復讐の念は消えていなかった...というストーリー展開で、“顔は変えても心までは変わらなかった男”が辿る哀しい運命を描き出す。
アクション演出が売りのウォルター・ヒルだが、醜い顔の男の苦悩と葛藤を描くことに重きが置かれた作品なので、肝心のアクションは比較的控え目。再就職先の造船所で出会った心優しい女性・ドナとのロマンスもストーリーの一つのエッセンスになっていて、アクション映画にお約束の“愛する女性を巻き込んだ”クライマックスのアクションはなかなかの緊張感を味わえる。ただ、見応えのあるアクションはそのくらいで、全体的にウォルター・ヒル「らしさ」というのは少し足りない。

音楽担当はウォルター・ヒル監督御用達で、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』で一躍有名になったライ・クーダー。同監督の『トレスパス』でも音楽を担当したが、妙に間延びした音楽がアクション映画には完全に不釣り合いだった。本作の音楽も予想通り間延びした音楽ばかりで若干辟易するが、アクション一辺倒の『トレスパス』とは違い、本作はアクションが少ない上にシリアスな人間ドラマが展開されるのでさほど違和感はない。

そして、脇を固めるモーガン・フリーマンとフォレスト・ウィテカーが好演。モーガン・フリーマンはジョニー逮捕に執念を燃やすドローンズ刑事を冷酷に演じ、一方のフォレスト・ウィテカーはドローンズ刑事とは対照的にジョニーを信用し、彼の更生を精神面からサポートするレッシャー医師を演じる。
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