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アニー・ホールのEyesworthのレビュー・感想・評価

アニー・ホール(1977年製作の映画)
4.8
【ウディ・アレンの原点にして頂点】

1978年にアカデミー作品賞を含む4部門を受賞した、映画界の異端児ウディ・アレンの監督の出世作にして自身が主演も務めたラブロマンス・コメディ。

テレビで活躍するコメディアンのアルビー・シンガー(ウディ・アレン)が愛したアニー・ホール(ダイアン・キートン)との恋愛模様をアルビー自身の軽妙洒脱な語りで物語が展開されていく。アルビーはネガティブな人生観を持ち、15年間精神科医に通っており、多弁で面倒くさい理屈屋だが独特の愛嬌もあり、なんだか放っておけない魅力がある男だ。
最初の少年時代のアルビーがクラスメイトの少女にキスした場面で、その少女が「フロイトでも性的潜在期だと!」とアルビーを批判するシーンで心を掴まれて、90分あっという間に見ることができた。ウディ・アレン特有のユーモアに満ち溢れた諧謔や皮肉は好きな人はめちゃくちゃ好きで、逆に苦手な人はずっと苦手だと思う。個人的には、昔ウディ・アレン作品の世界観には触れていたので、全く抵抗感がなくハマることができた。この作品には多種多様なジャンルの固有名詞が登場するので、アメリカの歴史や政治、映画、文学、音楽、哲学、コメディなどの文化リテラシーが高い人ほどこの作品のコンテクストをより理解し、もっと楽しめるのではないかと思う。その点で自分の理解ではまだまだ追いつかない点もあり、のびしろと捉えるしかない。もっと楽しめるように勉強しようと思う。
脚本もコンパクトにして秀逸で、衣装も70年代の代表的なラルフ・ローレンのファッションを纏ったダイアン・キートンは美しく、この時代に視聴者と対話するシーンや二重字幕などメタ的な視点を採り入れた斬新な表現手法において唯一無二の傑作だと思う。

「私を会員にするようなクラブには入りたくない」
「自慰行為も立派なセックスだ」
「人生の空虚な部分をオーガズムで埋めようと思うと大変だ」
「“関係”というのは、サメに似ている。常に前進していないと死んでしまう」
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