島晃一

アニー・ホールの島晃一のレビュー・感想・評価

アニー・ホール(1977年製作の映画)
5.0
今日まで続くウディ・アレン作品特有のキャラクターや手法を確立した、記念碑的な映画。

死への強迫観念があるというセリフを述べるように、人生の意味や死といった実存的な問いに取り憑かれ、神経質かつ不安定で、映画や芸術についてうるさい、アレン自身を投影したかのような役柄。

芸術についての蘊蓄含めた会話を長回しで撮る。しかしそのロングテイクは、リアリズムから外れていく。マクルーハンの話をするときに本人を連れて批判させる、第四の壁を超えて見てる人に話しかける、通行人に劇中であったことをいきなり話す、会話の途中で話していることとは別の本心を字幕に入れる等々の当時斬新だった手法の数々は、今でもスタイリッシュだ。

最新作、『サン・セバスチャンへ、ようこそ』のラストでは、先ほどの実存的な問いに対して、仕事や愛、家族といった何気ないことが、人生の空虚さを埋めるという会話があるが、『アニー・ホール』でのダイアン・キートンの笑顔を捉えたいくつものシーンは、そうした答えに説得力を持たせるほど魅力的だ。
島晃一

島晃一