エソラゴト

アニー・ホールのエソラゴトのレビュー・感想・評価

アニー・ホール(1977年製作の映画)
-
NYを舞台にした大人のラブストーリー
……と言えば聞こえは良いがー。


冒頭、主人公アルビー自身の恋愛観や人生観、元恋人アニー・ホールへの独白から物語は始まるが、それがまた理屈っぽくて未練たらしくて皮肉屋で知的な主人公のキャラクターが全面に押し出されていてそのままその調子で物語に引き込まれていく。

そんな彼とは正反対な明朗活発で自由奔放なアニーと恋に落ちるのだが、最初は何を考えているのか分からないというお互いに対する興味もありそれが恋愛を持続させる要因だったのが、次第にその価値観の相違がマイナス方向へ…。

主人公が職業柄弁が立ち偏屈でとっつき難い性格なので観ていて最初はイラッとくるが、何回か見直してみると何だか憎めない愛すべきキャラクターだと気付く。

きっとそれは男性特有の恋愛に対する相手への独占欲や独り善がりさをストレートに体現し、そしてその大切な人を失ってから自分の愚かさや自分勝手さを思い知るという、酸いも甘いも噛み分けてるであろうイイ年した大のオトナが純粋に大真面目にこのストーリーを語っているからなのかもしれない。

また観ている我々に疑問を投げかけてみせたり、見知らぬ人々に話しかけたりかけられたり、過去と未来を行ったり来たり、心の中を覗いたり覗かれたり…、様々な凝った演出で「映画」という虚構空間も体験させてくれる映画でもある。

男性目線で時系列をバラしたり心中を映像化させたり等、よくあるラブストーリーとは一線を画すという点で『(500)日のサマー』が現代版『アニーホール』と評される由縁が理解できたような気がした。