これまでのヒッチコック作品とは少し毛色の違う時代劇。いわゆる悪代官ものという感じで町の有力者がごろつきを陰で操りながら悪事を働くという水戸黄門なんかでよく見るような話である。しかし物語は単なる勧善懲悪ではなく悪党が成敗されて終わりというようにはいかない。悪党を束ねるジョスは彼を慕う妻とともに裏切りの末に殺されてしまうし、黒幕であるペンガラン卿も精神に異常をきたしていたことが判明する。どちらかというと悪党のキャラクターのほうに深みがあり陰鬱な後味の残る話と基本の冒険活劇的な部分があまり食い合わせがよくないため全体の印象がぼんやりしてしまっているきらいはある。