ノッチ

巌窟の野獣のノッチのレビュー・感想・評価

巌窟の野獣(1939年製作の映画)
2.5
18世紀末、母を亡くし孤児となったメアリーは故郷アイルランドを離れ、英国西南部の町コーンウォールに伯母夫妻の経営する宿屋ジャマイカ亭を訪ねる。

そこは港に巣くう悪党どものたむろする恐ろしい場所で、彼女は様々の身の毛もよだつ経験をする。

ヒッチコック英国時代最後の作品。

サスペンス映画の伝統のないイギリスで、サスペンスを多く作ったアルフレッド・ヒッチコックの英国時代最後の作品ですが、彼の映画の中では低位だと思います。

特筆すべき所の全く無い作品。

内容については、最後のあたりがあっけないような気がしました。

あとは普通のドラマ。

ヒッチ自身もかなり不満らしい。

ひどい作品だといってる。

おまけに「主演のロートンはプロフェッショナルではなかった」と言い、 ひどい野郎だ!と罵倒している。

しかし彼は名演だと思いますし、それが問題ではないと思います。

また、まだデビューしたばかりのモーリン・オハラが、美しい。

正直言ってロートンの1人舞台だが、荒れた海や汚い宿など暗いシーンが多い中で、モーリン・オハラの美しさは際立っていた。

しかし撮影中に何があったか知りませんが、映画の展開が見え見えで、いかにも作り物の感じがあってB級映画です。

なぞの黒幕、潜入捜査、美女の巻き込まれと犯罪ものとしては基本を踏まえているが、短めの作品も割にはテンポもよくない。

ラストもスリル不足で、第二次世界大戦を控えてアメリカ移住がヒッチコックを始めオハラなどにも影響していたのではなかろうか。

だがおもしろいのは、強盗団の黒幕の設定です。

この作品の中で彼を犯罪者とは言っておらず、「病気だ」と言及しているのです。

一見、昔ながらの運命的な犯罪物語のように見えながら、後の『サイコ』のような精神異常による犯罪者、快楽犯罪者を創造している点は、ヒッチコックらしいといえるのではないでしょうか。
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