デニロ

港のヨーコ ヨコハマ ヨコスカのデニロのレビュー・感想・評価

3.0
山根成之。『同棲時代 今日子と次郎』『新同棲時代 愛のくらし』『しあわせの一番星』『愛と誠』『あした輝く』『続愛と誠』『おれの行く道』そして本作が8本目の監督作品。監督のデビューが1968年『復讐の歌が聞える』という作品で貞永方久監督との共同監督作品。山根監督は、先の8作と共同監督併せて本作をフェリーニの作品に因んで8 1/2と呼んでいた。1977年都内の公民館で講演した折にそんな話をしていた。

フェリーニの『8 1/2 』は謎のようなタイトルだったけれどそれ以上の意味はないようだし、山根監督は旬の女優を揃えて気張ったようだった。既に『さらば夏の光よ』『突然、嵐のように』も公開されていて会場は一杯だった覚えがある。『突然、嵐のように』のラストシーンは、『祭りの準備』よりも切なくて良かったと言われてうれしそうだった。小松左京の「果てしなき流れの果てに」を映画化したいと壮大な企画を語っていた。

松坂慶子、早乙女愛、原田美枝子、多岐川裕美を配して何をしたかったのかがよく分らない作品だったけれど、主演が松坂慶子というのは解せません。実質的には早乙女愛でしょう。早乙女愛じゃ集客力がなかったということか。演技もまだまだいまひとつだったけれど。でもいいのです。フェリーニは映画監督を主人公にして自らを語っていたけれど、山根監督は早乙女愛こと瀬戸口さとみその人を描きたかったかのようだ。鹿児島から出てきたちょっとかわいい女の子を『愛と誠』で主人公にしたはいいけれど、その後どうしていいのか分からない。そんな映画会社の不始末を監督が一身に背負っているかのようだ。それも愛の標なのでしょう。

1975年公開。原案阿木燿子。脚本山根成之、南部英夫。同時上映は貞永方久監督『童貞』。
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