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ミラクル/奇蹟のkanacoのレビュー・感想・評価

ミラクル/奇蹟(1989年製作の映画)
3.7
米映画『ポケット一杯の幸福』をジャッキー・チェンが監督・脚本・主演を務め舞台を香港に変更してリメイク。マフィアが恩人のために人助けの大芝居を打つ一難去ってまた一難のトラブル系バタバタコメディ。ドラマとアクションのバランスが良くてジャッキー初心者に優しく、入門としてピッタリかも😊✨(140文字)

****以下ネタバレあり&乱雑文****

『香港映画見ようね会』に参加させていただきます。また主催XXXXXさん、お誕生日おめでとうございます🍰🎉

そして鑑賞の機会をありがとうございます😆

◆あらすじ◆
1930年代の香港。職を探すために田舎から香港にやってきた青年コウは詐欺に遇い、持っていたお金のほとんどを騙し取られてしまう。途方に暮れているコウは、話しかけてきた花売りの老婆から癒しのために一輪だけ薔薇を買った。すると、偶然にマフィアの抗争に巻き込まれ、その成り行きでマフィアのボスを助けることとなり、そのままボスになってしまう。無一文の人生からの好転。馴れないマフィアのボスという仕事に奮闘しながら、コウは薔薇が幸運を運んできたと信じ、老婆から薔薇を引き続き一輪ずつ買う。しかしある日、コウが老婆の元へ訪れると彼女は問題に巻き込まれ憔悴してしまっていた。コウはこれまでのお礼のために、彼女の悩みを解決しようとするが…。

❶『ポケット一杯の幸福』をジャッキー・チェンが監督・脚本・主演を務め、舞台を香港に変更してリメイク

フランク・キャプラ監督のアメリカ映画『一日だけの淑女』(1933)のセリフリメイク『ポケット一杯の幸福』(1961)を、ジャッキー・チェンが監督・脚本・主演を務め、舞台を香港に変更したリメイク作品。アクション・コメディ・ドラマが基調の娯楽映画です。母から『ポケット一杯の幸福』を推されていて前から鑑賞したかったのですが、配信になくてずっと見る機会がなく…。U-nextの見どころ欄で本作がそのリメイクであることが書かれていてビックリ😮!

田舎から職を探すために香港へ出てきたジャッキー・チェン演じるコウが、花売りの老婆から一輪の薔薇を買ったことで幸運が舞い込むようになり、ひょんなことからマフィアのボスになります。一方、花売りの老婆には上海で暮らす娘がいました。娘は上海で富裕層の青年と恋人となり、彼とその親を紹介するために香港に帰ると連絡をよこします。しかし老婆は、娘に安心して上海で暮らしてもらうために「自分は香港で裕福な暮らしをしている」と嘘をついており、実は貧しい花売りだとばれてしまえば縁談が破局してしまうかもしれないと困っていました。コウは〈幸運の薔薇〉の恩返しとして老婆を助けるために、大芝居を打つこと思いつきます。しかし次々と問題が発生し…という物語です。

元作品がどのようなテイストなのかは分かりませんが、ストーリー部分だけを抽出したところが『ポケット一杯の幸福』なのだとしたら、 “ジャッキー・チェン”的…少なくとも唯一私が見たことがあるジャッキー作品『ポリス・ストーリー』と同じニュアンスが濃く注ぎ込まれているように感じました。(もちろん詳細は違いますが、大分類すれば)同様のヒーロー像を持つ主人公と、テンポのよいコミカルな進行と、随所にアクションを魅せるための時間を明確に設定して演出している〈ジャッキー・チェンを堪能するための映画〉の印象です。

❷ドラマとアクションのバランスの優れジャッキー初心者に優しく、入門としてピッタリ

ヒューマンドラマ×アクションコメディですが、雰囲気は一貫して明るく、良いテンポで進行していきます。マフィアとその関係者、香港警察、一般市民と登場人物はさまざまですが、みなコミカルでポップ。マフィアの物語ですが、ストーリーは〈幸運に後押しされて成功していくお人よしで腕っ節が強い主人公〉と〈困っている人への人助け〉なので見ていて気楽ですし、一難去ってまた一難のトラブル系バタバタコメディは娯楽映画として楽しめます。主人公を初めとする〈はみ出し者〉のような大人たちが、老婆の願いから〈若い二人の婚約〉のために全力で奮闘する様子は微笑ましさと晴れやかさがあり良かったです。

また、主人公のコウが〈カンフーの得意なマフィアのボス〉という設定のため、メインはヒューマンドラマながら随所にしっかりとカンフーアクションを魅せる場を設けています。『ポリス・ストーリー』に比べると回数は少ないですが各シーンは割とたっぷり時間をとっていて〈今はジャッキー・チェンのアクションを堪能する時間ですよ~〉というアナウンスが幻聴で聞こえてくるようです🤣

アクションは相変わらず華麗ですが、今作はコメディに振っているのでアクションもクールよりも意外性あるファニーな動きが多め。〈戦闘〉として見れば演出過剰に感じますが、〈画映え〉のための遠回りなアクションは、それ故にエンターテインメント的であり、高度というか計算されているように見え、〈アイデア豊富な特殊戦闘に見せながらも最適化された精密な動き〉って感じで、子気味良くて気持ちが良かったです 😁✨

明るい作品ですし、ヒューマンドラマ一辺倒でないし、アクション一辺倒でもない、ジャッキー・チェンらしいキャラクターヒーローと視覚的にも楽しい華麗なアクションも堪能できるというバランス良い作品に思えました。私のような普段このジャンルを見ない人、ジャッキー・チェン初心者の方にもかなり優しい、入門としてピッタリな作品に思いました😆✨

❸気になってしまう老婆のその後。果たしてこれは〈奇蹟〉で〈幸運〉なのか

この作品はドタバタコメディであり〈奇蹟〉ととれる〈幸運〉の連続によって全てが丸く収まるハッピーエンドの型。皆笑顔で幕を閉じますが、個人的には腑に落ちません🤔

コウの視点では正しくそうかと思います。ほぼ無一文の状態から職を手に入れ、馴れないながらもうまく回し、恋人もでき、内の抗争も外の抗争も収め、他者から理解を得て、自身の信念は貫き、努力は報われ、恩人を助ける作戦も成功する…〈幸運〉を追い風にとんとん拍子に進み最終の状態は良好です。

しかし身分を隠すという大芝居に成功した老婆の状況は最初と最後で全く変わっていません。善良で娘の幸せのためだとしても自分の身分を偽り、秘密がバレそうになって憔悴し涙をこぼす中、手を差し伸べられ、自分はただオロオロしているだけのうちにたくさんの人が動き、その善意の塊から受動的に〈嘘〉が一時だけ〈真実〉として貫かれますが〈嘘〉は〈噓〉のまま。それはあまりにもその場しのぎで〈虚構〉そのものに見えます。

この作品の前に『華麗なるギャツビー』を鑑賞したため私が〈虚構〉に敏感になっているだけかもしれませんが…「今は誤魔化したけれど、これからどうするのだろう」とその後の老婆を憂う気持ちが抑えられません🥺

もし、希望があるとするならば、嘘がいよいよ隠し通せなくなり老婆が泣きながら真実を告白しようとした時の娘、婚約者、婚約者の親の様子から見て、彼らも老婆の嘘を知っていて(気がついていて)その上で老婆のその気持ちを汲み、黙って大芝居に参加していたのだとしたら、そういう人たちに家族として囲まれたのは優しい〈幸運〉で〈奇蹟〉であり、私の心配は杞憂となるかもしれません。

そうであれば『華麗なるギャツビー』から引きずる私のションボリさえ払拭するような、〈幸運〉と〈救い〉の物語だと思います😌✨

🌹🐝「ヒューマンドラマとアクションのバランスがよく、とても鑑賞しやすい素敵な香港映画でした!ジャッキー・チェン色がきちんと出ていたと思うので、本作を見てますます『ポケット一杯の幸福』の方も鑑賞したくなりました~🥰」
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