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箱根風雲録のqqfowlのレビュー・感想・評価

箱根風雲録(1952年製作の映画)
4.0
1666年~1670年にかけて行われた、箱根用水(深良用水)の灌漑工事に関する映画。原作はタカクラテル「ハコネ用水」、未読。

もともと水に恵まれなかった深良村では米が作れず村民は困窮していた。そこで当時の名主が、新田開発に実績のある商人、友野与右衛門に依頼して水利工事を行うことになり、藩の許可を得て着工した。

ここまでは史実どおり。

映画のキモ、<幕府に妨害されて工事が難航する>については、諸説あり。


それはさておき、最後、用水が完成して水が通るところはすごく感動したし、工事を進めたい友野与右衛門、与右衛門に絡んでくる盗賊一味、妨害工作にいそしむ幕府、三つ巴の争いに翻弄される村民みたいな、エンターテインメント作品として面白かった! 画質は悪かったけど。


特に盗賊の首領が可笑しかった。友野与右衛門が持つ土木工事の技術に目を付け仲間に引き入れようとするが断られて、殺そうとするが、最終的に与右衛門の男気に惚れ込んでこっそり助けようとする。こっそりなのがポイント。見返りは全く求めない無償の奉仕なのがスゴイ。ラスボス的な風貌の首領が村民に紛れて石運んだりしてるの可愛くて笑っちゃった。ごめん。

もう一つ印象的だったのは友野与右衛門と村民が和解するシーン。中でも工事に反対してたお爺ちゃん「わしを○○にしてくれ」昔話でしか聞かない言葉が出てきて、すごい時代性を感じた。


本作は、左派の人が書いた原作を、左派の人が映画化したものらしい。

前に某ノンフィクション小説で、1960年代プラハのロシア語学校の図書室に、日本語の「箱根用水」が所蔵されていたと読んで、ずいぶん渋い本が置いてあったんだなあと驚いたんだけど、もしかしたら思想的な事情だったのかな。
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