CANACO

いまを生きるのCANACOのネタバレレビュー・内容・結末

いまを生きる(1989年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

アカデミー脚本賞を受賞した『刑事ジョン・ブック/目撃者』と同じピーター・ウィアー監督作品。
脚本はどちらも監督ではないが、本作もアカデミー脚本賞を受賞している。

感動作と言われる作品を避けてきたのを一転、一気に見ている時期。今まで見てきた“感動作”は、強い苦味や苦悩とセットになっている作品が多かったが、これもそうだった。

全寮制の名門男子高ウェルトン・アカデミーに赴任した型破りのジョン・キーティング先生と、同好会「死せる詩人の会」のメンバーたちの物語。

映画の教師ものというジャンルには明るくないが、「型破りの教師がくる」「学校運営側と対立する」「生徒が変わる」という王道ストーリー。国内ドラマに多いやつ。ただ、生徒たちがすごく素直でそもそも反抗しない点が違う。

前半がキラキラしていて後半が重くなっていく点も、一般的な教師ドラマと違う。前半の名言連発はたしかに素晴らしいし、今後も個人的に大切にしたい言葉がある。ただ、“船長”キーティングの教え方はちょっと危ういなと思いながら見ていた。
まあ……とはいえ、きっと最後は全部うまくいくんでしょう?とふんでいた。だから終盤の重さには驚いた。そうなんだ、失敗するんだ。しかも取り返しがつかない。

私は学校側と同じ考えで、このキーティング先生の罪は重いと思っている。あそこまで鼓舞したのだから、過干渉なくらいフォローすべきだったよと親族目線。
子どもたちについては、コンプレックス、親に逆らえない心理、弱さ、裏切りなどの描写が絶妙で完璧だったと思う。この話を綺麗事で終わらせなかったのはすごい。

すごいけど「で、どうするの?」感は拭えない。「伝説の教師、言いたいことだけ言って去るの巻」とも受け取れる。学校側を変えられていないのが残念で、ラストに重さを吹き飛ばすような言葉があったらなあと思う。詩を扱っている作品だけあって、前半の台詞が本当に素晴らしかったから。
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