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いまを生きるのmiyuのレビュー・感想・評価

いまを生きる(1989年製作の映画)
3.0
大人に対する、「絶対に違う」という気持ち。そういう、社会性の中で身につけられていってこんがらがって正しさとは違う方向に行っていると感じる醜いような傾向のようなものが、クラスメイトや身近な同年代の者にも生まれつつあり、それに対してすら自分が無力であるということに気付いたときの、絶望。話せばわかる、と言いたいのに、それが言えないこと。
悔しい。あの詩の先生ですら、面倒なことに首を突っ込むなとか言って仲間の事情に介入することを止めた。その介入があれば何か変わったかもしれないのに。何ができるのか、何もできないのか、黙って自分の立場を主張して、そこで何か罰を受けるようなことしかできないのか。それでもそれには価値がある、というしかない。
こんなの死ぬ、そりゃあ死ぬ、と思ってたら死んだ。「こんなの死んでしまう」という体験を疑似的に行って、それがそのときの全てではないこと、自分がそれを実際に起こしてしまったら体験できない、その後のことを見たりとか、その場以外のところに未来で存在することができるということや何かそこを切り抜ける方法があるかもしれないというイメージを、先例を、それがたとえフィクションであったとしても持つことができること。そういう、相対化する力を持つということが、物語の持つ力なんだと思った。死んでしまったあの男子生徒に、もっと、物語の、詩の、それが持つ力を感じる余地が残されていたら、というのも含めて。
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