半兵衛

女王蜂と大学の竜の半兵衛のレビュー・感想・評価

女王蜂と大学の竜(1960年製作の映画)
3.7
モダニスト・石井輝男監督の本領が発揮された作品で、縄張りを狙う悪徳やくざと彼らに操られる三国人やくざ対正義のやくざという典型的なやくざ映画がポップで軽妙な娯楽映画に。

グラマラスな肢体を惜しげもなく披露する組長の娘三原葉子や弱気を助け強気をくじくという任侠スタイルが似合う組長の嵐寛寿郎、特攻隊帰りのアウトローを熱演する吉田輝雄、抗争を避けようとする嵐の方針に反発して勝手に敵対する組に殴り込みするも逆に因果をつけられて主人公を裏切ることになる沖竜次といった新東宝の役者陣の個性を生かした演出も作品に清涼なメリハリを与え作品に充実感をもたらす。ただ役者たちが脇にいたるまでみな頑張っている分、話の中枢にまったく関与しないいかにもゲスト出演という感じで出ている天知茂が割りを食ってしまっているのも事実。

敵が仕掛けた罠を吉田輝雄がことごとく看破し、逆に悪党をやり返すという任侠映画らしからぬ展開が爽快。悪人に処女を奪われそうになった万里昌代を吉田が救出し、悪人に犬のふりをさせてもてあそぶのは痛快を通り越してやりすぎだけど(こういう石井輝男の悪のりは後年の東映作品で更にスパークする)。

ラストでの悪党たちの戦いは嵐が率いるやくざだけではなく吉田たちアウトローグループ、三原率いる売春婦グループまで参加して深刻とは程遠いお祭り騒ぎ状態に。でもそんなばか騒ぎみたいな終わらせ方が観客をひたすら楽しませる石井監督の作風にぴったり。
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