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キッスで殺せ!のmasayaanのレビュー・感想・評価

キッスで殺せ!(1955年製作の映画)
4.6
昨日、心身ともにすり減らして帰宅、このまま寝るのも悔しいから何か映画でも見ようと思い、大事に取っておいたアルドリッチの『キッスで殺せ!』を開封、酒をあおりながら衝動的に観てしまいました。笑

冒頭、裸足でアスファルトの上を駆ける誰かの足元だけが、タイトな移動撮影で数秒映し出される瞬間、もう傑作だと思った。モノクロの画面、そこで刻まれる光と影、その美しい亀裂。すぐにそれが女だと分かるものの、彼女が何から逃げているのかはいっさい分からず、彼女の捨て身のヒッチハイクに根負けした男が彼女を拾うも、「奴ら」の追跡はあっという間で、最期を覚悟した女は車の助手席でこう言い残す。「無事にバスターミナルまで付いたら、わたしのことはすべて忘れて。でも、もしバスターミナルまでたどり着けなかったら・・・私のことを覚えていて」

彼女を拾った男が「たまたま」私立探偵であったことから、この映画は「たまたま」フィルム・ノワール的な様相を呈しているが(んなたまたまがあるかい!笑)、まずそうしたフィルム・ノワールとして、つまり「警察にウザがられ、『奴ら』に有難い忠告として痛い目にあわされつつ、何人かの魅力的な女たちに振り回されながらも、ある「箱」をめぐる謎の中心へと近づいていく私立探偵もの」として一級品でありながらも、アート・フィルムのごとき画面の美しさが時にそうした物語の題材を圧倒しており、終いにゃ問題のその「箱」が光りだすのだからもう訳が分からなかった!笑
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