カラン

キッスで殺せ!のカランのレビュー・感想・評価

キッスで殺せ!(1955年製作の映画)
4.0
夜のハイウェイに飛び出してきた女を乗せてやると、追われている様子である。女の言う所まで送りとどけようとすると、突然、襲われて、車ごと谷に落とされて、気がつくと病室にいた。。。女は利用するが、優しい。男は張り倒す。暴力強めの007は、私立探偵マイク・ハマー。


「リメンバー・ミー」と「キス・ミー」の重ね方、ずらし方がいい。女に仮託して、女たちを重ねながらずらして、物語を展開する。脚本で操作したんだろうね。

キスと往復ビンタを何回もやる。(^^) また、年齢高めの変人たちが楽しい。車の整備士とか、引っ越し屋とか、オペラ好きの爺さんたちはよく喋る。物語を駆動させているのはベタベタなヒューマニズムなのであり、犯罪の黒幕や核兵器(デーモンコア?)なんぞはマクガフィンにすぎないはず。妙に省略された鉄拳制裁とキスと変人たちの存在感が面白くもなんともないヒューマニズムを隠してしまっているからなのか、ベタつかない語り口。

夜の道路は『ロストハイウェイ』に繋がるか。中央分離の白線が浮かび上がる怪しい夜の疾走感が、オープンカーなのでよく出ていた。不安と焦燥の風を女に吹きつけながら、動じない男の自信をいっぺんに示す。かっこいい。オープニングはスターウォーズのようにクレジットが斜めに出ており、ナット・キング・コールの歌を合わせる無人のハイウェイ。これもかっこいい。


Blu-rayで視聴。音声は基本的に同録しており、暗騒音をきちんと拾っている。ツインピークスキャラの殺し屋の声は定位せず拡散するアテレコ。使い分けがしっかりと聞き取れる音質。1955年の作品であるのだから、かなり優秀なリマスターである。同じモノラルなのに1987年の『ナイルの娘』とは雲泥の差。こういう技術的な部分に、皆さん、ぜひ注目しましょう。注目しないと人間は進歩をさぼる。(^^) ナイルの方は、人間の声だけがおかしいから、あのジリジリ言う電気的なノイズは製作時の録音と編集のせいだと思うけどな。話を戻して、アルドリッチの今回のディスクは画質も良かった。
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