Sankawa7

江分利満氏の優雅な生活のSankawa7のレビュー・感想・評価

江分利満氏の優雅な生活(1963年製作の映画)
3.9
Netflixレコメンから
初見。

あまり聞いた事なかったが奇抜なタイトルに惹かれて視聴。喜劇とも悲劇もつかぬシニカルでエッジの利いた作品、とても面白かった。

現実の山口瞳氏の直木賞小説を原作としつつ大幅に改変し山口氏の視点を入れたような主人公の設定に切り替えてオムニバスを長編作品に作り直して映像化した。

主人公の小林桂樹演じる江分利満、平凡なサラリーマンが自らの半生を自伝的に描いた小説が直木賞候補に❗

主人公の勤務先もサントリー宣伝部、カルピスやフジテレビも登場、王の満塁ホームランとかいうセリフもあり、そんなに遠くは無い昭和であることを実感。屋上でゴルフ練習、バレーボール、バトミントンするサラリーマン達、尻フリフリGO!GO!ダンスのOLたち。

制作側は岡本喜八監督に、喜劇作品を期待したが実際に出来上がったものは戦中世代の悲哀と戦死していった同世代の人間たちへのレクイエム、そして経済発展していく日本をシニカルにそして期待と不安も込めて描かれたようなものすごい作品であった。
制作側は出来に激怒、興行的に不発だったらしい。

特に戦中戦後の両方を知っている戦中世代、年がひとつ違うだけで徴兵されたりされなかったりそういう業を背負っている。
何度も出てくる神宮球場の学徒出陣のシーンがむなしい。

そして使う用語も太平洋戦争ではなく大東亜戦争だったし、親が勝手に決めたらしい誕生日の11月3日も明治節、明治天皇の誕生日、これも後に文化の日に変えられしまっているが、戦前の明治節の唄とか消された日本文化も垣間みれるなど、両方の要素が自然に交錯するところは非常に斬新で戦中世代かつこの時代ならではの感覚だと思う。

結局我々は戦争も安保も止められなかった

と、二瓶正也らと語るところ凄く良かった。

戦争成金から落ちぶれた父に東野英治郎、妻に新珠三千代。
上司にカメオて松村達雄❗
ウルトラマンの桜井浩子も登場。

役者陣、なじみの顔と今は見ない顔がごちゃっとなっててそれも面白かった。
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