喜連川風連

江分利満氏の優雅な生活の喜連川風連のレビュー・感想・評価

江分利満氏の優雅な生活(1963年製作の映画)
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「薄いカルピスというのは、山手線がちょうど大塚、巣鴨、駒込、田端あたりを走る時の味気なさに似てると思わないかね?」

映画編集の玉手箱のような映画!

アニメーション、ストップモーション、合成編集、スマッシュカット、ありとあらゆる編集技法が登場し、とても面白い。

中でも、動きや形で次のシーンに繋げるマッチカットが素晴らしい効果を発揮する。

白黒映画が苦手な人も冒頭3分だけ見てほしい。

高度成長期に突入する寸前の慌ただしい熱量をカメラはとらえながら、戦前が遠ざかっていく様を主人公を通じて伝える。

屋上でバレーボールやバトミントンに興じる戦後の若者らと、その輪に入れない江分利氏が対象的だ。

貸本屋、当時の風俗、バーでの飲み方、カルピスの立場、女性の価値観、じゃり道の道路、パソコンのないオフィス、二日酔いして休める会社、別の文明を見ているかのような面白さ。

日本のいちばん長い日しかり、肉弾しかり、岡本喜八さんは常に視線が後ろを向いているのがいい。
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