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江分利満氏の優雅な生活のGTのレビュー・感想・評価

江分利満氏の優雅な生活(1963年製作の映画)
4.5
 平凡なサラリーマンがひょんなことから小説を書くことに、悩んだ末自分の人生を小説にする…という映画。
 基本的に主人公である江分利満(えぶりまん=Every man)氏の半生や日常が、軽妙な語り口で淡々と語られる。彼の独白はおそらく彼が実際に書いた小説を読み上げたものであり、ユーモアの中に幾分かのペーソスを含んだその文体は妙に癖になる。それを盛り上げるのが、岡本喜八監督特有の(?)アニメーションの挿入をはじめとするシャレた演出群だ。「ああ爆弾」以外実は見たことがないが、そのドライブ感はとても心地いい。
 不器用な自分への自己嫌悪、貧乏への不満、家庭を持つことに対する不安、家庭の不和、両親との確執など、描かれる題材は地味だが普遍的であり、そうした問題と必死に格闘する江分の不器用な真っ直ぐさは、涙が出るほど眩しい。泥臭さと洒脱さの混ざり具合が絶妙で、途中までは☆5でいいかなと思っていたのだが、終盤酒を酔って戦争のことを延々語り続けるシーンは、正直かなり退屈。この部分は演出なども一切入らず、ただただおっさんの愚痴を聞かされているという感じがしていただけなかった。主題としても、今まで執拗に「自分」を語り続けたのにどうして戦争?とその部分だけ浮いてる感じがしてしまった。
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