佐藤克巳

愛染かつら 前後篇の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

愛染かつら 前後篇(1938年製作の映画)
4.5
総集篇といっても現存するフィルムを繋ぎ合わせただけの作品である事は、愛染かつらに二人が触れるシーンが一才飛んでいる事からしても明らかだが、逆にスッキリ観れた要因かも知れない。津村浩三上原謙は、この作品が嫌いと公言していたが、高石かつ枝田中絹代にとっては、松竹女優トップ再起の切札となっただろう。堅実な野村浩将の演出の他、看護婦出雲八重子のおとぼけ振りが冴えていたし、津村妹森川まさみ、高石娘小島和子も好演した。だが際立っていたのは、アメリカ帰りの令嬢桑野通子で、明るくドライで爽やかな雰囲気は、御涙頂戴物の湿っぽさを吹き飛ばした。歌手で看護婦姿で舞台に立つ田中も見事だった。
佐藤克巳

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