otomisan

黒の超特急のotomisanのレビュー・感想・評価

黒の超特急(1964年製作の映画)
4.0
 善人はお呼びでない。田宮からして堅気風のばくち打ちという柄で落ちぶれ株屋から転じて郷里岡山の俄か不動産屋。同類の臭いに儲けごころが悶えたのかデベロッパー加東の身辺、腹中なぞ確かめもしないのだろう、土地買収の大仕事の片棒担ぎを引き受ける。
 自動車工場用地取得が皆さんにちょっとイロを付けて差し上げて完了。農家さんもあたくし共もウインウインで実に結構と思ったら、農家さん預金の金利で実直生活のはずがたちまち浪費の果ての借金地獄とか、ここにも善人はいなかった。しかも、どこで仕入れたウワサか田宮より早く第2期新幹線計画と加東の正体を仕入れて田宮に「だから金を貸せ」と迫るので可笑しい。
 片棒の担ぎ負け、株じゃまたも大負け、こんな田宮の負け犬気質、博徒風情の間抜け振りが心配なくらいだが、その心配は悪人ぞろいのこの話のハニートラップ藤由紀子の映画脚本上ありそな人情話での善性を見落として死ぬに任せた成り行きに現れる。加東の逆襲を併せて食らって田宮自身も袋叩き。
 はて、人ふたり殺すのが監督的に苦である理由がよく分からないし、大物代議士の一の矢加東の裏で二の矢を継がえぬのも不審なところだが、90分にまとめるには田宮袋叩きを倍増しにして躱すしかないのか?監督もなかなか善人じゃない。
 大方、警察に泣きついた田宮、サツの旦那方から、アンタ由起子の金目当てに病気のおっかさんの裏がある事には気づいてたんじゃないの?と水を向けられるまでカネ一筋、無闇な大望?なんだそりゃに駆られて自分が走ってきたことに気付かなかったかもしれない。それが博徒の習い性か。
 たぶん自分の悪事は起訴猶予どまり、見返りに知ってること全て吐かされて因果を含められてクニさ戻るんだべ。殺し損ねた加東も巨悪追及の見返りで無期どまり、もう新幹線の通る岡山にはいられまい。田宮のハードボイルドな人生が制限超過に加速するワルい話だった。
otomisan

otomisan