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黒の超特急のRのレビュー・感想・評価

黒の超特急(1964年製作の映画)
4.7
面白い!!! 増村保造めちゃくちゃ面白い!!! もっと見たい! 黒シリーズ3作品の中では、最終作のコレが一番面白かった! 話けっこう複雑やけど今までで一番わかりやすいし、映像全ショットいちいちカッコいいし、テンポも素晴らしい。俳優はみんな最高の演技を見せてくれ、緊張感あふれる不穏な音楽も胸に迫る。地味っちゃ地味やけど娯楽映画に求めるものがすべて揃ってる! 一瞬たりとも退屈なシーンなし! 楽しい! 嬉しい! しかも冒頭、電車の駅にて庭瀬の看板が出てきて、ん? 岡山の? と思って見てみたら、看板の下の方に、⬅︎中庄、岡山➡︎って載ってて、幼少期に時々使ってた伯備線ですやん! その時点でテンション上がった! 馴染み深い土地が舞台ってこんなに上がるもんなんやねー。初体験。けど、岡山県民、田舎モン扱いされまくりで笑ってもーた! 田舎モンは欲深い、とか、岡山のどん百姓が、さっさと地元へ帰れ! みたいな発言が…ひ、ひどい…まぁそれは置いといて笑 東京から来た意地汚そうな太っちょのおっさん中江が、田宮二郎演じる岡山県民の桔梗と言う名の男に、自動車工場敷設のために岡山の土地を買いたい、けど、買い手が余所者だと値を上げられまくるから、桔梗さん、協力して地元民を説得してもらえませんか、安く買えたら大金払いまっせ。と頼み、見事、商談を成功させ、桔梗さんもがっぽり儲けることに成功。しかし、その後、その金を投資で失ってしまい、金に困った桔梗は、偶然、件の土地に工場ではなく、超特急の線路ができるということを知る。何と。線路なら話が違う。工場なんかよりも遥かにボロ儲けしたに違いないと、更なる金を要求しに東京に出かけるが、それ以上金を出す気がまったくない中江。こいつはきっと線路ができることをインサイダー情報で知ったに違いない、ならばこれは汚職にあたる、追究して、真相を暴いて、脅して金を取ってやれ!と情報を集め始める桔梗。中江を演じる加東大介は、主人公以上の存在感を出してて、とにかく金のためならどんな汚いことでもやりまっせってノリがぴったりの風貌。さらに、この汚職に関わる謎のおんな田丸陽子と、彼女の愛人で鉄道会社重役の財津、こちらは藤由紀子と船越英二。この最高に印象的な人物4人が織りなすゆすり合い、だまし合い、愛と裏切りと汚職と殺し。金の欲望にまみれてギラギラの人間たち。見事なストーリーテリングのエンターテインメントの中に、繁栄の陰で利用され、搾取される側の人間の悲哀と苦悩を描き出し、過去の映画なのに、何か今後日本はこういう感じの社会に戻っていくんじゃないか、という予感を抱かせる、めちゃくちゃ面白い傑作やった! サラリーマンなんて聞こえはいいが、要するに一生うだつの上がらない虫ケラさ、俺はそんな惨めな生き方は嫌だ。何としてでも這い上がってやる! みたいな活発な野心家の桔梗さんですが、多くの現代人は、何も考えずに与えられた仕事をギリギリでこなして、だらだらSNSでボヤいて、他人のせいにするだけなのが、何とも哀しいです。それを考えると、たとえ汚れていたって野心があった方が潔いのかもしれないな、とも思ったりした。最後に、本作のバイオレンスシーンはすごく見ごたえアリ! 特に、やくざボコボコシーンと、クライマックスのギャーーーーはすごい。よくあんな恐ろしい演技やったわ。この時代の俳優さんたちはみなさんキレイさをかなぐり捨ててて最高です! 黒シリーズ最高やった! また見たいわー!
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