プレコップ

バングラデシュのコンサートのプレコップのレビュー・感想・評価

4.2
ジョージ・ハリスンが中心となった「バングラデシュ難民救済コンサート」の模様を収録したフィルム。

ソロアルバム『オール・シングス・マスト・パス』が成功した後のジョージ・ハリスンと彼のシタールの師匠にして共同主催者のラヴィ・シャンカル、「明日への願い」がビートルズのメンバーソロ初の全米No. 1を獲得したリンゴ・スター、ビートルズ末期の重要人物ビリー・プレストンに加え、ジョージと関わりの深いレオン・ラッセル、エリック・クラプトン、ボブ・ディランなどが参加している。

ステージで繰り広げられる音楽の力を信じ、かなり演出を抑えた本作は、映画史というよりポピュラー音楽史にとって偉大な瞬間を捉えられている。ラヴィ・シャンカルの魂の演奏とそれに応えるニューヨークの観客たちの鼓動を感じられる冒頭から引き込まれる。

『オール・シングス〜』の充実感によってジョージのソロのセットリストも満足いくものになっている。それだけでも素晴らしいが、さらにバックにレオン・ラッセル、エリック・クラプトン、ジェシ・エド・デイヴィス、バッドフィンガーの面々と一線級のミュージシャンが入った最強ラインナップによって豪華なコンサートを展開している。リンゴ・スターとのビートルズ解散後初のメンバー共演もアツい。

見どころは枚挙にいとまがないが、ビリー・プレストンの熱狂的パフォーマンス&ダンス、リンゴの茶目っ気あるヴォーカル、レオン・ラッセルの崩しまくり「Jumpin Jack Flash」カバーなどが印象的だった。

そして、終盤に現れるボブ・ディランが全てを持っていく。アコースティック一本のフォークシンガースタイルはある意味1960年代のセルフパロディでもあるが、バックにまわるレオン&ジョージが華を添え、原点回帰しつつも一歩進んだ感が伺える。

「静かなるビートル」とも呼ばれたジョージはホワイトルックのジャケットの派手なイメージで登場し、神秘主義な歌詞や豪華絢爛なアレンジを纏うヘンテコなコード進行などのキャラ付けがハマっていっている。ここからジョージのシンガーソングライターとしての足跡、そしてトラヴェリング・ウィルベリーズなどにつながる人脈の第一章の資料としてロックファン必見の作品になっている。

そして、それまで映画として控えていたメッセージ性はラストの「Bangla Desh」でバングラデシュの現状として主張していく。ここで、映画としてライブの観客だけでなく世界中の人々に訴えかける意義を果たしている。後の「Live Aid」や「We Are The World」などポピュラー音楽界の慈善活動の先駆けとなったという点で、パフォーマンスと共に歴史的価値がある。
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