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ラスト・シューティストのペインのレビュー・感想・評価

ラスト・シューティスト(1976年製作の映画)
4.5
“Mr.西部劇”ジョン・ウェイン×ドン・シーゲル監督から、若きロン・ハワードへのアメリカ映画の伝統の継承。

ウェインの西部劇と、現在に至るまでのハワードの活躍を両方見ている身としては堪らなくグっときてしまう。

正直映画として、“ドン・シーゲル監督作”として見ると、他の彼の傑作群に見られるテキパキとした職人的な語り口や、感傷を排したドライなタッチは鳴りを潜め、ゆったりと、なんならこちらの情感に訴えかけてくる演出であり、“すごくよく出来た面白い傑作”とは言い難い部分もある。

しかし、それも“ジョン・ウェインの遺作”とならば話は別だ。イーストウッド『グラン・トリノ』や、近年のレッドフォード『さらば、愛しきアウトロー』、スタローン『ランボー ラスト・ブラッド』なんかにも通ずる“ケジメ”の映画。それまでその主演俳優自身が自身のキャリアで演じてきたキャラクターがしてきたことに、映画でもってケジメをつける。ジョン・ウェインに関しては特に“彼が演じてきたキャラクター = ジョン・ウェインという人そのもの”といっても過言ではないわけで、実人生ともリンクしまくった1作なのである。実際に本作の製作前にウェインは癌を患っており、本作の脚本は遺作になることを悟っていたであろうウェインに宛て書きされたものといってよいだろう(一応、原作モノではある)。

劇中のウェイン演じるJ・B・ブックスは、もう“過去の人”と化していて、紛れもなく“老いぼれ”であり、会う人会う人に面倒くさがられたり煙たがられたりする。しかし、そんな彼に唯一寄り添ってくれたのがボンド(※演じるのがまたローレン・バコールという粋なキャスティング)と、その息子であるギヨム(ロン・ハワード)。また、ウェインがジョン・フォード監督『リバティ・バランスを射った男』で共に主演を務め競演したジェームズ・スチュワートも医師役で友情出演している。とにかくそんなキャスト陣を見ているだけでも泣けてくる(笑)

P.S.
“決闘に向う者と西部劇の終わり”を描いた本作の出演後、ジョン・ウェインから“継承”したロン・ハワードが、同年1976年にロジャー・コーマンプロデュースのもと『バニシング in TURBO』で映画監督デビューをしているのも興味深い。
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