世界を描く。
恐怖を描く。
葛藤を描く。
感情を描く。
言葉はいらない。
映像で圧倒する。
久しぶりに“映画”を見た。
最後に主人公の語る独白すら蛇足に感じるほど、映像や表情で圧倒する作品。
奴隷=レプリカントにいわば恐怖という名の死を与える役目であるブレードランナー。
彼は人間に近い存在(レプリカント)から生を奪うという悩みを抱えて生きていた。
本来、恐怖を与える側であるデッカードたち。
だが、クライマックスに訪れるレプリカントが受けてきた恐怖の追体験を主人公が受け、待ち受ける死が決定付けられたレプリカントの人生の虚しさとの対比に体がゾワッとする。
クギを自分の指に突き刺した時点でこの展開をロイは分かっていたのだろう。
主人公へ「痛みを伴いながら生き続けろ」という最後のメッセージだったのかもしれない。
最後のロイの「俺はお前らよりずっとものすごいものを見てきた・・」から続く語りは圧巻。
よっぽど、彼らの方がニンゲンらしく生きている。
レプリカントと人間。
ニンゲンという記号を表すものは何か?
なにかに対する気持ちが生じるところか?
基本的な欲求を超えた何かを得ることか?
見かけではない、生まれではない、作られ方でもない。ニンゲンは考え、気持ちや感情が芽生え、それを表現する。
人は自分に似て非なるものを作り出した時果たしてそれをどう扱うのだろう・・
淡々とした音楽から引き込まれる映像。
これがリドリースコットか。
名前の爽やかさとは裏腹の重苦しい未来映画。