柏エシディシ

ブレードランナーの柏エシディシのレビュー・感想・評価

ブレードランナー(1982年製作の映画)
5.0
映画史に燦然と輝くカルトムービーにてSF映画の金字塔。
そんなお馴染みの肩書きはともかく、私自身にとってはスターウォーズと並んで映画の原体験にある特別な作品。
(しかし、スターウォーズはともかく年端もいかぬ鼻垂れ小僧にこういう映画を観せた亡き親父よ、、、ありがとうw)

今や当たり前の様になっている「酸性雨降りしきる雑然としたネオン街」というディストピア的近未来のビジュアルの誕生の瞬間。
久しぶりの鑑賞ではブラウン管を使ったモニターや原始的な電子音を鳴らすプロップに「時代性」を感じるものの、現実の2017年においてもアナログ回帰的な風潮がある事を考えると、これはこれであり得たレトロフューチャー的な滋味があって面白いです。

何より「ビジュアリスト」リドリースコットの才気迸る絵作りは神憑っている。デッカードの狭いアパートやクライマックスのセバスチャンのマンションの実在感。まるで自分が其処に居たかの様に記憶に刻まれています。

「マトリックス」や「攻殻機動隊」の師父としての本作を期待した若い観客が肩透かしを受けている様子は残念ですが、本作の本懐はフィルムノワールなんですよね。
思えば、自分がチャンドラーやハメットのハードボイルド小説を愛好するのは本作の刷り込みが大きいのだと改めて認識。
面白いですね。元々、この映画こそが1940年代のパルプフィクションの影響を受けているというのに。
映画というメデイアが過去の芸術全般の影響を受け、尚且つ継承していく重要な役割を担っている証左の様に思うし、ブレードランナーの色褪せない魅力の鍵の様にも思います。

製作当時のストレスフルな状況からハリソンフォードは本作を快く思っていなかった様ですが、少し苛立った主人公デッカードの役作りにおいては功を奏した様に思います。
そして、ショーンヤングとダリルハンナの人間離れした美しさと儚さも忘れ難い魅力をたたえています。
しかし何よりブレードランナーを傑作足らしめてる要因はルドガーハウアーのロイ・バティー。
クライマックスの「あのシーン」の名台詞。ルドガーハウアーの即興だというのだから本当に参ってしまう。映画の神が降りているとしか言いようが無い。何度観ても泣けてしまう。

巨匠リドリースコットが新作「エイリアンコヴェナント」でも向き合っているテーマが本作で既に触れられているし、とても豊かで奥行きのある世界観とメッセージが込められていて、何度観ても惹きつけられてしまう魔力を持った映画。自分にとって「ブレードランナー」はそんな作品。

35年ぶりの新作公開に向けて、ブレードランナー強化週間。はじめます。
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