netfilms

ブレードランナーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ブレードランナー(1982年製作の映画)
4.1
 2019年11月ロサンゼルス、人口増大や環境破壊により富裕層たちは宇宙へ移住し、地球に残った人々は人口過密の高層ビル群が立ち並ぶ大都市での生活を強いられていた。タイレル社が開発したNEXUS6型と呼ばれる「レプリカント」は、宇宙での過酷な奴隷労働に従事していた。しかし、レプリカントには製造から数年経つと感情が芽生え、人間に反旗を翻す事件が多発する。タイレル社によってレプリカントたちは4年の寿命が与えられたが、そのうちの何体かが地球に紛れ込んだ。彼らを駆逐する任務を負うのが、専任捜査官ブレードランナーだった。霧に包まれたロスの夜景、燃えさかる炎、その上を飛ぶスピナー。ピラミッドのような巨大施設タイレル社の美しいビジュアルが現れ、瞳孔のエクストリーム・クローズ・アップが映る美しい導入部。ホールデン(モーガン・ポール)による新入社員のフォークト=カンプフ検査。現れたリオン(ブライオン・ジェームズ)はレプリカントであるか否かを判定するための20 - 30項目の質問に応えるが、突如暴挙に出る。酸性雨が降りしきるロサンゼルスの地上、スシバーの空きを待つ元ブレードランナーのリック・デッカード(ハリソン・フォード)は2つで十分ですよと言われた店から突然、ガフ(エドワード・ジェームズ・オルモス)にある場所へと連れ戻される。

 元同僚を殺し、タイレル社に押し入って身分を書き換え潜伏したレプリカント男女4名(バッティ、リオン、ゾーラ、プリス)を探すデッカードの姿は、1940年代ハリウッドのハードボイルドな探偵映画やフィルム・ノワールを彷彿とさせる。酸性雨が降りしきる荒廃した未来、黒い闇と大粒の雨と深い霧の浮かぶ2019年のロサンゼルスの光景の中、97Fに住むデッカードの焦燥感や心の揺らぎは現代社会に生きる我々の病巣をも照らす。無機質なものが限りなく有機的なものに近付いていく現代社会を見通すようなリドリー・スコットの眼差し、シド・ミードによる極めて斬新なビジュアル・デザイン、想像上の未来がどんどん無菌化していったのに対し、リドリー・スコットとシド・ミードが描くのは、酸性雨で汚れ、古ぼけたネオンに彩られ、滋養強壮剤「強力わかもと」の不毛なCMが風景を無化するようなポスト・モダン漂うレトロ・フューチャーな世界に他ならない。酸性雨の降りしきるロサンゼルスの街並みを筆頭に、J・F・セバスチャン(ウィリアム・サンダーソン)の住居となるブラッドベリー・アパートの造形。最後に立ちはだかるロイ・バッティ(ルトガー・ハウアー)の焦燥感とラスボスらしい見事な存在感。無形の悲しみに包まれた主人公の物語に対比的に描かれた空を飛ぶ白い鳩と一角獣の折り紙が強い余韻を醸し出す。
netfilms

netfilms