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レナードの朝のおとはのネタバレレビュー・内容・結末

レナードの朝(1990年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

※ネタバレ注意※

家と学校で1度ずつ見ました。

日常の貴重さを知りながら一日一日を噛み締めて生きることは素晴らしいことです。目覚めのあと、数十年のうちに変わり果てた街に繰り出し、生を謳歌する様子は本当にキラキラしていて、当たり前に生きていることがどれほど幸せかを教えてくれます。それと同時にセイヤーは、数十年もの時間を失ったことを知るのは幸せといえるのか、知らないうちに配偶者が亡くなっていたり離婚手続きが済んでいたりする状況で幸せを感じられるのか、といった悩みを抱きながら日々を過ごします。

しかし、奇跡は長く続かず、投与していた薬に対して耐性ができ、薬が効かなくなっていきます。日常を失うことへの恐れは患者の奇行のきっかけとなり、患者の周りの人に大きなショックを与えます。そして少しずつ体が麻痺し始め、自分に明日は無いかもしれないという恐怖の中で、患者は再び目覚めのない眠りに落ちていきます。

自分の日常に終わりがあることを知って、患者に希望を持って生きろというのは酷ではないか。また昏睡状態に戻ってしまうのなら日常の素晴らしさなど知らない方が良かったのではないか。多くの出資者や患者の御家族の協力の元で高額な新薬の投与を断行したセイヤーは当然周りにも責められたでしょうし、自分自身も自分を攻め続けたことでしょう。自分に信頼をよせていた患者兼友達であるレナードに異変が起こった時のセイヤーの苦しみは計り知れません。誰の視点にたってもひたすらに辛いです。前半が幸せで満ち溢れていることが、後半の悲しみをよりいっそう際立たせているように感じます。全員が再び目覚めなくなったあと、レナードが覚めない眠りから戻ったことを元気に嬉しそうに語るビデオを見ているセイヤーの姿は、彼の患者に対する献身的な姿勢が報われなかったことを思わせるものでした。

作中のレナードのモデルとなった方は、ハーバードを飛び級で卒業後、20歳で昏睡状態となったそうです。将来を約束されたといっても過言ではない人の未来が難病によって絶たれることがないよう、これからも医療が発展していくことを願います。長寿は望まないので心身ともに健康に生きたいです。

ところで話が変わりますがキャストさんの演技が完凸していました。主演2人は勿論ですが、全員素晴らしいです。自分の意思を持たない昏睡状態の人を演じるのはとても難しいと思います。故意に震えたり、棒立ちのまま倒れたりといった演技の場面も全く不自然なところがなく、初めの方はひたすら感嘆の呻き(?)みたいなものをあげていました。

ストーリーにおいても演技においても良作でした。
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