TP

レナードの朝のTPのレビュー・感想・評価

レナードの朝(1990年製作の映画)
4.3
★1991年に続き、2回目の鑑賞★

 1969年。嗜眠性脳炎で動作機能をほとんど失った20名に、開発されたばかりのパーキンソン病向けの新薬を投与し、一時的に覚醒させたという実話がベース。実験的投薬を行ったセイヤー医師をロビン・ウィリアムズ、一時的に覚醒した、30年以上も動けなかった患者レナードをデ・ニーロが演じた。

 とにかくウィリアムズとデ・ニーロの演技が余計な気持を起こさせないほど安定して、安心させることと、この二人以外には地味な俳優しか起用していないところも良い。
 物語は一時的に覚醒し、その後ほどなく硬直が再発するレナードを狂言回しとして進行するのだが、描かれるのはレナードと実験的投与を行ったセイヤー医師の友情だけではない。患者を見守る家族の心情や、いずれはまた昔のように戻ってしまう患者自身の怖れなど、人間の様々な感情を浮き彫りにする。そして健康に生きているということが、それだけでも幸せなのだということまで感じさせる。
 ちょっと詰め込み過ぎ的なところはあるものの、なかなか色々なことを考えさせる、バランスのとれた良作

 ところで、デ・ニーロが演じた強いけいれんを伴う脳炎患者の姿態は現代では差別と扱われ、全く映像として描かれることはないだろうと思われるが、何でも差別という言葉で表現を束縛するのはいかがなものか、と思う。
 本作が描くのは、外見上は動きがなくても脳は死んでいないという人間の神秘も描いており、見方を変えれば、そのような患者の理解にもつながるものと捉えることもできる。
TP

TP