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レナードの朝のKのネタバレレビュー・内容・結末

レナードの朝(1990年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

原題: Awakenings
 実際の医師が著作した医療ノンフィクションが原作で、映画の方は患者であるレナードと医師のセイヤーの二人に焦点を絞り、ある程度脚色された(と思われる)フィクション映画。

 いい映画だけど、これが初めてのレビューなので、とりあえず初めての鑑賞で3.3。
 
 一番良かったシーンは、症状が悪化したレナードとレナードが恋したポーラの食事からのダンスシーン。もう会わないでおこう告げるレナードは切ないし、ポーラ良いやつ過ぎるし、一番感動するシーンだと思う。

 最後は、恋愛に消極的なセイヤーがレナードとの出会いを経てエレノアにアプローチをかけるという、既定路線っぽい終わり方。ノンフィクション原作なので、まあそういうものかというか、当たり前だけど映画としては予期しなかった現実的な終わり方。

 研究者から仕事を求めて臨床医になったセイヤーの人物像は、人付き合いや色恋が苦手で、知識オタクっぽく、優しくて誠実。ありきたりな感じもするけど、このセイヤー主体でその真面目さで話が進んでいるので自然に見てられる。

 序盤に医師のセイヤーが一人勝手に大量の新薬を投薬するシーンがある。結果的にその行いでレナードは30年ぶりに目を覚ますことになったから良かった風になってるけど、見ているこっちは、「それは医師としてどうなんだろう」とモヤっとした。ほぼ人体実験みたいなものだし、現実は身勝手な人体実験によって科学は進歩したとしても、医師セイヤーの人柄とその軽率さがあまり合わない気がしなくもない、、、。

 レナードの演説や、それを受けて(と思われる)終盤の医師セイヤーの演説は「生きることの素晴らしさ」という普遍的な内容で、二人が言う重みもあっていい。
 
 レナードが目覚めた後のレナードの母は、未だにレナードを子供扱いして、過保護で共依存的な言動が見られるけど、レナードは若干のそっけない素振りをして、セイヤーは母の言い分に対してあまり議論しようとしない。リアルな演出だとも思うけど、レナードは自由になりたいと医師団の前で主張するシーンもあるし、セイヤーが母に対してキツく説得するようなシーンもあってもいいんじゃないかと思う。

 ノンフィクション原作の映画だからか、30年前の映画だからか、あまり仕掛けのあるようなストーリー映画ではないからか、どういう理由か分からないけど、正直、感動を誘うような演出や音楽が少し大袈裟に感じて、自分としては一瞬冷める場面が少しある。
 でも音楽はすごく良いので、出しどころというか演出の仕方がちょっと好みじゃなかった。

 原題はawakenings で目覚めや覚醒といった単語の訳になるけど、「レナードの朝」っていう邦題は日本人にとっては、スッと入って記憶に残るような、秀逸な翻訳だと思う。

 最後に
 セイヤーがやったことは正しかったのか、無駄だったのか。それは議論で決められることではない、というか誰にもわからない。ただ、セイヤーは医師として自分の良心を信じて、全力で患者と病気と向き合った、医師としての使命を全うしようとした。医療を扱う創作物が映画やドラマなどのジャンルを問わず多い理由が少しわかった気がする。
 医療現場というのは命や人生といった濃密で重大な決定に関わるやり取りが行われている場所。患者は問題を抱えていて、医師は豊富な知識と、高い思考力、良心を持ってそれを解決しようとする。感動させるにはよく準備された設定なんだろう。

 あとデニーロの演技すごい。

2024年3月29日
K

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