rensaurus

レナードの朝のrensaurusのレビュー・感想・評価

レナードの朝(1990年製作の映画)
4.4
自分にはまだとても受け止めきれない映画だった。

レナードが30年もの硬直状態から目覚めるという奇跡的な体験を、本当に目の当たりにしているようで、言い表せない感情でいっぱいになった。

また、目覚めたレナードの、生きていることへの感謝の感覚や、自分自身を生きようとする確固たる意志に、この上ない感動を味わった。

そして、病を回復させたセイヤー博士の治療の過程は、患者の眼を真っ直ぐ見つめ、心の中にまで耳を傾けるような、慈愛に近い献身的な行為そのものであり、少し神経質なセイヤーだからこその鋭い観察眼と、治療への貪欲な姿勢が見られ、こちらも美しかった。

その上で中盤、レナードの人間としての自由な意志が、経済的な理由で踏み躙られてしまう。そこから、力を失ってしまったかのように病が再発し、僅かに踏んばりはしたものの、完治せず、硬直状態のままに映画の幕が閉じた。

彼の人生が、人々の人生に、これ以上ない問いかけを投げかけたのは確かだ。

それでも、レナードの自由は、一度も手に入らなかった。このことを、どう受け止めればいいのか、私は分からない。

「人間の魂は薬より強い」と言うのなら、彼の魂が踏み躙られたことをどう受け止めればいいのか。やっぱり分からない。
rensaurus

rensaurus