自分にはまだとても受け止めきれない映画だった。
レナードが30年もの硬直状態から目覚めるという奇跡的な体験を、本当に目の当たりにしているようで、言い表せない感情でいっぱいになった。
また、目覚めたレナードの、生きていることへの感謝の感覚や、自分自身を生きようとする確固たる意志に、この上ない感動を味わった。
そして、病を回復させたセイヤー博士の治療の過程は、患者の眼を真っ直ぐ見つめ、心の中にまで耳を傾けるような、慈愛に近い献身的な行為そのものであり、少し神経質なセイヤーだからこその鋭い観察眼と、治療への貪欲な姿勢が見られ、こちらも美しかった。
その上で中盤、レナードの人間としての自由な意志が、経済的な理由で踏み躙られてしまう。そこから、力を失ってしまったかのように病が再発し、僅かに踏んばりはしたものの、完治せず、硬直状態のままに映画の幕が閉じた。
彼の人生が、人々の人生に、これ以上ない問いかけを投げかけたのは確かだ。
それでも、レナードの自由は、一度も手に入らなかった。このことを、どう受け止めればいいのか、私は分からない。
「人間の魂は薬より強い」と言うのなら、彼の魂が踏み躙られたことをどう受け止めればいいのか。やっぱり分からない。