むーしゅ

ヤング≒アダルトのむーしゅのレビュー・感想・評価

ヤング≒アダルト(2011年製作の映画)
3.8
 Jason Reitmanが監督、Diablo Codyが脚本という「JUNO/ジュノ」コンビの2作目。同じコンビの3作目「タリーと私の秘密の時間」がこちらもCharlize Theron主演で2018年8月に公開されますが、その予習も兼ねて鑑賞。

 ヤングアダルトシリーズ小説の最終巻を執筆中のメイビスは、元恋人から赤ちゃんの誕生パーティの招待状を貰い、戸惑うも帰郷することを決める。早速元恋人バディと再会したメイビスは、きっと彼がまた自分のことを好きになるに違いないという自信から、彼を誘惑し始めるのだが・・・という話。いわゆる高校時代のスター女子末路系映画ですが、アメリカのスクールカーストって本当に分かりやすくて面白いです。そもそもその後の人生で映画を作ったり、小説を書いたりする道を選ぶ人達は、学生時代確実にスクールカースト最下層にオタクとして位置していたため、当時の上位層が転落していく物語が好きです。まぁでもITベンチャー企業の社長もだいたいパソコン好きの最下層から頂点に上がっていくわけで、上位層の転落はあながち間違っていないのかもしれないですけどね。

 この映画はまず脚本が良いです。脚本を担当したDiablo Codyは、過去にストリッパーやテレフォン・セックスオペレーターをしていた異色な経歴を持ち、初作品の「JUNO/ジュノ」でアカデミー脚本賞を受賞しましたが、独特な観点から来る女性の描き方が絶妙です。こんな人絶対いるな、と思わせるリアリティーが視聴者を物語にぐいぐい引き込んでいきますね。本作の主人公メイビスは、彼女の小説の主人公が乗り移っているかのような、高校卒業前で人生の価値観が止まっている人。Jason Reitman監督はインタビューでDiablo Codyの脚本の共通点として、主人公が人生においての時間軸を把握できていないことをあげ、主人公メイビスを大人になるのが遅すぎた女性と表現しています。周囲の人が現実を見ながら生活しているのに、彼女だけは未だにそこを理解しておらず痛い女感がすごいです。そんな彼女が後れ馳せながら成長していく姿を、小説を書くということに重ねながら見届けるという、分かりやすく無駄がない物語でした。止まっていた時計が動き出したかのようなラストも良かったです。

 そしてそんな主人公を見事に演じたCharlize Theronが素晴らしい。正直設定はピッタリですが、後々のイメージを考えると絶対演じない方が良い役なのに、これこそCharlize自身なのかと思うほどの熱演。犬にエサをあげれば空箱が山積みになっていたり、Wii fitでダイエットに励んでいたり、プリンターのインクに唾を入れて凌いてみたり、キレイなのに荒んでいる生活が垣間見える冒頭10分で持っていかれます。彼女はいつも自分のイメージを高めることより、破壊する方向のキャラクターを選んで演じているようにも見えますが、予想を越えた結果を出してくれます。顔面偏差値がハリウッドトップレベルなので、どうしても顔だけ女優と同じ枠で見られがちですが、彼女の役作りの本気度こそハリウッドトップレベルです。体重増減をする役も多いですが、是非これからも難しい役に挑戦していってほしいと思います。

 本作は感動する物語ではないですし共感という訳でも無いので、人に勧めるというタイプの映画ではないですが、この脚本×役者という掛け算はまた見返したくなります。ところでこの映画は邦題が猛烈にダサいので、またやってくれたかと思いましたが、なんと原題も同じですね。しかし英語のyoung adultは小説のジャンル感がありますが、日本語のヤングアダルトは成人前というような世代的意味合いで理解してしまいます。こういう時こそ変わった邦題の出番な気もしますが、チャンスを活かせなかったようで今後に期待です。
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